Googleによる生成AI検索の衝撃

2024年5月15日にGoogleは、昨年から試験運用していた生成AIによる検索結果表示機能SGEをAI Overviewとして正式運用したことを発表しました。今まではSearch Labs で選択したユーザーだけが利用できる機能でしたが、これからはすべてのユーザーに(望む臨まないにかかわりなく)公開されます。アメリカではすでに一般公開で展開されています。今後、アメリカ以外の国(日本を含む)でも一般公開されていく予定です。
この原稿を書いている時点では、日本はまだ試験運用中扱いのようです。

AI Overview(旧 SGE)によるGoogleの検索生成体験は、私たちがオンラインで情報を見つける方法を革命的に変えようとしています。従来の検索エンジンがリンクを返すのに対して、AI Overviewは文脈を理解し、ユーザーのニーズに合わせた詳細な回答を検索結果画面上で生成します。AI Overviewの基本、検索行動の変化、SEO戦略への影響について説明します。

AI Overview(旧 SGE)とは?

AI Overviewは、Googleの最新のAI駆動型検索技術です。従来の検索方法がリンクのリストを表示するのに対し、AI Overviewは生成AIを使用して検索結果内に詳細な回答を直接作成します。まるでChatGPTのようにAIが自然言語で対話し、ユーザーの質問に直接答えを生成します。
AI Overviewは、検索ユーザーが入力したクエリ(検索キーワード)の文脈、背後の意図を理解し、複数の情報源から統合された情報を提供する、知識豊富なアシスタントがいるようなものです。
AI Overviewの主な機能を以下にまとめます。

  • 文脈の理解: クエリの意図を把握し、より正確な結果を提供します。
  • ダイレクトな回答: 従来のような関連記事へのリンク表示の代わりに、複数の情報源から統合された情報をダイレクトに提供します。
  • 動的な対話: ユーザーはチャット式の対話で検索の方向性を絞り込んだり、追加したりすることができます。

AI Overviewはユーザーの検索行動をどのように変える?

AI Overviewの導入は、ユーザーが検索エンジンと対話する方法を変えています。

リンクから直接回答へ

従来の検索では、ユーザーは検索結果のリンクをクリックし、複数のページを見比べて回答を探していました。
しかしAI Overviewでは、検索結果ページに要点がまとまった回答が表示されます。つまり、ユーザーはわざわざページを訪問しなくても欲しい情報を得られるようになったのです。
ウェブサイトへの流入は減るかもしれません。一方、AI Overviewに表示されるページへのクリック率は高まる傾向にあります。AI Overviewには、回答のベースになった(と思われる)ウェブページへのリンクがいくつか表示されます。
サイト運営者としては、AIにピックアップされやすいよう、質の高いコンテンツ作りを心がける必要があるでしょう。

対話的な検索体験

AI Overviewでは、表示された回答に対するフォローアップの質問ができます。ユーザーは一度で満足のいく回答を得るまで、検索を掘り下げていくことが可能なのです。
こうした対話的なやり取りが主流になれば、ユーザーの検索意図を深く理解し、幅広いニーズに応えられるコンテンツが重宝されるようになるかもしれません。ウェブサイトもユーザーとの対話を促すような、インタラクティブな設計が求められるかもしれません。

高まるAIへの信頼(依存度)

ユーザーはAIが生成した要約情報を頼りにするようになってきました。情報の正確さに加え、文脈に合った関連情報も提示してくれるAIを信用し、利用する人が増えています。
AIを味方につけるには、体系立てて整理された良質なコンテンツを発信し続けることが肝心です。将来的にはAIを活用したコンテンツ最適化など、AIを前提としたSEO手法の確立が必要になるかもしれません。
検索エンジンを巡る環境が大きく変わろうとしている今、ウェブサイト運営者はユーザーとAIの双方を意識したSEO戦略を練り直すことが求められそうです。

AI OverviewがこれからのSEO戦略に与える影響

AI Overviewの登場により、私たちがウェブサイトを最適化する方法、つまりSEO対策も変わっていく必要があるでしょう。

情報量が多くて深いコンテンツを作る必要

AI Overviewでは、ユーザーの質問に包括的に答えられる、情報量が多くて充実した内容のページが重宝されます。表面的な内容ではなく、トピックを深く掘り下げて説明しているページを目指しましょう。
AI Overviewの登場により、以下のようなクエリーではウェブサイトへの流入数が減少する可能性があります。

  • 簡単な質問や事実確認型のクエリー(例:「東京の人口は?」「一番高い山は?」)
  • 用語の定義や概要を求めるクエリー(例:「インフレとは」「SDGsの意味」)
  • ハウツー系のクエリー(例:「ネクタイの締め方」「ビザの取得方法」)

AIによる要約で十分な場合、わざわざサイトを訪問する必要がなくなるからです。一方、以下のようなクエリーは影響を受けにくいでしょう。

  • 主観的な評価や意見を求めるクエリー(例:「おすすめのイタリアン」「面白い小説」)
  • 最新ニュースや速報性の高い情報を求めるクエリー
  • 深掘りした専門的な内容を求めるクエリー

上記のようなクエリーでは、AIによる要約だけでは物足りず、詳細な情報を求めてサイトを訪問すると考えられます。
ただし、AI Overview が説明を生成する検索は、上記のような単純なクエリーよりも複雑なクエリが主な対象になると、Googleは発表しています。SGEの試験運用期間中よりも対象範囲が狭まると予想されます。ここは実際に一般公開されてから注視していくべきポイントでしょう。
検索結果の要約に載ることは重要ですが、そこで満足せずサイトを訪問したくなる工夫も必要です。例えば、ただレシピを載せるだけでなく、料理のコツや豆知識なども添えるなどの工夫が必要になるでしょう。
そして、ウェブサイトへの流入数が減少する可能性が高いクエリーに対応する記事にかかる制作工数を減らし、影響を受けにくいクエリーに答える記事に制作工数の重点を置くなどの対応が必要でしょう。

構造化データを使ってページ内容を整理する

構造化データとは、ページのどの部分が見出しで、本文で、商品名で、価格で…とタグ付けをしてページを整理することです。これにより、AIがページの内容を正確に理解しやすくなります。
例えば、商品ページなら価格や在庫情報を構造化データで明示すれば、AIがそれを認識して回答に反映してくれる可能性が高くなります。

ユーザーが求める情報を見極める

AI Overviewでは、ユーザーの質問の意図を汲み取り、ズバリそれに答えることが重要になります。ユーザーが何を知りたがっているのか、どんな課題を抱えているのかを想像し、それに沿った情報を提供するよう心がけましょう。
例えば、「ヨガ初心者におすすめのスタジオ」と検索された場合、初心者向けのレッスンや利用しやすい料金プランなどを紹介するページがマッチするでしょう。
オリジナリティの高い情報や切り口のあるコンテンツを発信するサイトは、これからも高い評価を受けるでしょう。例えば、以下のようなサイトです。

  • 体験談など、ユーザー目線の情報が豊富なサイト
  • AIでは生成しにくい、動画・画像・音声などの多彩な表現を含むサイト

つまり、ありきたりな情報をテキストだけで伝えるサイトは苦戦を強いられそうです。AIにはない独自の価値を発信できるかどうかが、サイトへの流入数を左右するポイントになりそうですね。

ユーザーの興味や関心を引き付ける

AI Overviewは、ユーザーとの対話を通じて動的に検索結果を変化させていきます。ですので、ページを訪問したユーザーを引き込み、さらなる興味を引き出すことが大切です。
例えば、読者の疑問に答えるQ&Aコーナーを設けたり、興味関心の近いトピックへの関連リンクを貼ったりするのも良い方法ですね。
AI Overview時代のSEOは、よりユーザー目線に立ち、AIにも理解されやすいよう、質の高いコンテンツ作りに注力することが鍵になりそうです。

まとめ

AI Overviewに最適化するための実践的なヒントをまとめましょう。

  • リッチスニペットを活用する: スキーママークアップを使用して検索エンジンがコンテンツの文脈を理解するのを助けます。
  • 高品質で関連性の高いコンテンツを作成する: 特定のクエリに詳細に応える権威のあるコンテンツを作成します。
  • 音声検索に最適化する: より会話的なクエリをサポートするため、音声検索に最適化することが有利です。

ウェブサイトを単なる情報の置き場ではなく、ユーザーに寄り添い価値を提供する場と捉えて、記事の構成を工夫していきたいものです。
これからの検索エンジンは私たちに、ユーザーとAIの双方を意識したサイト作りを求めているのかもしれません。
AI Overviewの登場は、デジタルの風景における重要な変化を意味します。AI Overviewを理解し、それに応じたSEO戦略を調整することで、コンテンツが効果的にターゲットオーディエンスに届き、エンゲージメントを高めることができます。変化を受け入れ、コンテンツを最適化し、AI検索の未来を味方につけましょう。
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