工務店経営は、新型コロナウイルスや資材高騰、人材不足など、様々な課題に直面しています。特に、業界特有の慣習や古い体質から脱却できずにいる中小工務店にとって、生き残りをかけた経営改革は喫緊の課題です。
しかし、経営課題の解決は簡単ではありません。具体的な行動に移せずに悩んでいる経営者も多いのではないでしょうか。
本記事では、工務店経営の現状と課題を正しく理解した上で、デジタル化の推進や資金繰りの安定化など、具体的な解決策を提示します。
変革の第一歩は、自社の状況を冷静に分析し、優先的に取り組むべき課題を明確にすることから始まります。本記事を参考に、工務店経営者の皆様が、持続的な成長に向けた戦略を描き、実行されることを願っております。
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工務店が経営で直面している課題
現在多くの工務店が直面している経営上の課題について説明します。
新型コロナウイルスの影響と着工数の減少
新型コロナウイルスの感染拡大により、工務店業界は大きな影響を受けています。外出自粛や経済活動の低迷により、住宅の新築やリフォームの需要が減少し、工事の着工数が大幅に減少しています。
この影響は長期化する可能性があり、工務店経営者は収益の減少や資金繰りの悪化に直面しています。
資材高騰
工務店経営における大きな課題の一つが、建設資材の価格高騰です。木材や鉄筋、セメントなどの主要な建設資材の価格が上昇傾向にあり、工事原価の増加につながっています。
この資材高騰は、世界的な需給のひっ迫や為替の変動、輸送コストの上昇などが背景にあり、工務店の収益性を圧迫する要因となっています。
例えば、国産材の価格は2020年のコロナショック以降、需要の増加と供給の制約により、平均で40%以上上昇しています。これにより、木造住宅の建設コストが大幅に増加し、工務店の利益率が低下しています。
また、鉄筋やセメントなどの資材も、世界的な需要の増加や輸送コストの上昇により、価格が上昇傾向にあります。
ICT(情報通信技術)革新に伴うスキルギャップ
建設業界では、生産性向上と働き方改革を目的として、ICT(情報通信技術)を活用した建設現場の効率化が進められています。測量、設計、施工、検査、維持管理のプロセス全体でICTを導入することで、業務の自動化や省人化を実現しようとするものです。
具体的には、以下のような先端技術の導入が進んでおり、施工の自動化や効率化が進んでいます。
- ドローンや3Dスキャナーを使った測量
- BIM(3次元データモデリング)を活用した設計
- ICT建機による自動制御施工
- タブレット端末を用いた現場管理
- ロボットを導入した施工
- センサーやAIを活用したモニタリング
一方で、これらの新技術に対応できる人材が不足しており、スキルギャップが生じています。工務店経営者は、従業員の技術力向上と人材確保が喫緊の課題となっています。
高齢化と人材不足
建設業界では若手の入職者が減少しており、技術者の高齢化が進んでいます。ベテラン技術者の退職に伴い、技術やノウハウの継承が困難になっており、人材不足が深刻化しています。
工務店経営者は、若手人材の確保と育成に力を入れるとともに、ベテラン技術者の知見を活かす仕組みづくりが求められています。
環境対応と持続可能な経営の必要性
近年、脱炭素社会の実現に向けて、建設業界でも環境対応が急務となっています。工務店経営者は、省エネルギー性能の高い住宅の提供や、環境負荷の低い建設プロセスの導入など、持続可能な経営への転換が求められています。
例えば、ZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)の普及が進んでいます。工務店経営者は、ZEHの施工ノウハウを習得し、顧客ニーズに対応することが重要です。
また、建設現場での廃棄物削減やリサイクルの推進、低公害車の導入など、環境負荷を低減する取り組みも求められています。
集客方法の変化
近年、工務店の集客方法は大きく変化しています。従来は、地域密着型の営業活動や紹介による口コミ獲得が主流でしたが、現在はWebサイトやSNSを活用したデジタルマーケティングが不可欠になっています。
集客方法の変化に対応するためには、工務店経営者はデジタル技術を積極的に活用し、マーケティング力を強化する必要があります。デジタルマーケティングの専門家との連携も視野に入れるべきでしょう。
安定した工務店経営を実現する戦略ポイント
では、工務店の経営を軌道に乗せるため、そしてさらなる成長を目指すためにおさえておくべき戦略ポイントを説明します。
地域密着型サービスの強化
工務店が安定した経営を実現するためには、地域密着型のサービスを強化し、他社との差別化を図ることが重要です。地域のニーズを的確に捉え、きめ細かなサービスを提供することで、顧客からの信頼を獲得し、リピート率を高めることができます。
例えば、以下施策で地域の特性を活かしたサービスを提供すること、地域社会とのつながりを深めることも重要です。
- 地域の気候風土に適した住宅設計
- 地場の木材を使った家づくり
- 地域のお祭りやイベントに積極的に参加
差別化戦略
工務店の差別化戦略としては、得意分野を明確にし、専門性を追求することも有効です。例えば、古民家再生や耐震リフォームなど、ニッチな市場でトップシェアを獲得することで、競合他社との差別化を図ることができます。
また、デザイン性の高い住宅や、IoTを活用した先進的な住宅など、独自の付加価値を提供することも重要です。
さらに、顧客データを活用したマーケティングにも力を入れるべきでしょう。顧客の属性や嗜好を分析し、ターゲットを絞ったアプローチを行うことで、効果的な営業活動が可能になります。
アフターサービスの充実
工務店の安定経営には、新規顧客の獲得だけでなく、既存顧客との関係性の維持・強化が欠かせません。住宅の引き渡し後も、定期的な点検や補修などのアフターサービスを充実させることで、顧客満足度を高め、リピート率とロイヤルティを向上させることができます。
例えば、引き渡し後1年目、5年目、10年目などの節目に、無料の点検サービスを提供することが効果的です。定期的な訪問や、メールマガジンの配信など、継続的な情報提供を行うことで、顧客との接点を維持することができます。
顧客満足度の向上
顧客の意見や要望に耳を傾け、サービス改善に活かすことも大切です。引き渡し後の顧客満足度を定量的に測定し、サービス品質の向上に役立てることも必要です。
アンケート調査などの指標を活用し、顧客の評価を可視化することで、課題を明確にし、改善策を講じることができます。
コスト管理
工務店の安定経営を実現するためには、コスト管理が欠かせません。建設資材の調達から現場の運営まで、あらゆる場面でコストを最適化し、利益率を向上させることが求められます。
以下のような効率的な現場運営のための仕組みづくりが求められます。
- 複数の仕入れ先から見積もり
- 工程管理を徹底し手戻りや無駄な作業を削減する
- 資材の在庫管理を適切に行い無駄な在庫を減らす
- ICTツールを活用した進捗管理
- 作業の標準化・マニュアル化
- 資材の標準化や規格化
また、協力会社との連携を強化し、最適な工程計画を立てることも欠かせません。
効率的な資源配分
工務店の経営資源の配分においては、自社の強みと成長分野に重点的に投資することが求められます。
例えば、高付加価値の住宅建築に特化するなど、得意分野に経営資源を集中することで、競争力を高めることができます。また、人材育成や技術開発など、将来の成長に向けた投資も欠かせません。
デジタル化
工務店の経営におけるデジタル化は、業務プロセスの自動化と効率化に大きく寄与します。受注管理、見積作成、発注業務、工程管理など、様々な業務をシステム化することで、作業時間の短縮とミスの防止が可能となります。
- 受注管理システム:顧客情報や商談履歴を一元管理し、営業活動の効率化を図る
- 見積作成システム:複雑な積算業務を自動化し、精度の高い見積書を迅速に作成
- 電子発注システム:資材の手配や外注先との調整を円滑に行う
- 工程管理システム:工事の進捗状況をリアルタイムで把握
- 顧客管理システム:顧客の属性や嗜好、問い合わせ履歴などを一元管理し、きめ細かなフォローアップ
- デジタルマーケティング:Webサイトやソーシャルメディアを通じて潜在顧客との接点を増やす
デジタル化による業務の自動化と効率化は、工務店の生産性向上に直結します。限られた人的資源を最大限に活用し、受注機会の拡大や工期短縮につなげることができます。また、業務の属人化を防ぎ、ノウハウの共有や引き継ぎを容易にすることも可能です。
工務店の資金繰り改善策
手元資金の出入りのタイムラグが大きくなりがちな工務店の経営で重要な、資金繰りの改善方法について解説します。
キャッシュインアウトの管理
工務店の経営において、現金流の管理は非常に重要です。工事の着工から引き渡しまでの期間が長く、期中の資金繰りが課題となるケースが少なくありません。そのため、現金の状況を適切に把握することが求められます。
現金流管理の基本は、入金と出金のバランスを適切にコントロールすることです。工事の進捗に合わせた請求書の発行や、集金の迅速化に努めることで、キャッシュインのタイミングを少しでも早めることができます。
また、支払いサイトの延長交渉や、コスト削減による支出の抑制など、キャッシュアウトを最適化することも重要です。
現金流の予測精度向上
現金流の予測においては、受注工事の進捗管理が鍵となります。工事ごとの資金計画を綿密に立て、実績との乖離を随時チェックすることで、予測精度を高めることができます。
また、資材調達や外注費用など、変動要因を考慮した上で、複数のシナリオを想定することも有効です。
現金流管理と予測の精度向上には、経営者の強いリーダーシップが不可欠です。資金繰りの重要性を社内に浸透させ、全社一丸となって取り組む体制を構築することが求められます。
地域金融機関との連携
工務店の資金繰り改善策として地域金融機関との連携が注目されています。従来の銀行融資だけでなく、多様な資金調達手段を確保することで、財務基盤の強化につなげることができます。
地域金融機関との連携は、工務店の資金調達において重要な役割を果たします。地方銀行や信用金庫は、地域経済の活性化に注力しており、地元企業の支援に積極的です。
工務店の事業計画や財務状況を丁寧に説明し、信頼関係を構築することで、円滑な資金調達が可能となります。
また、地域金融機関との連携は、ビジネスマッチングの機会にもつながります。金融機関が主催する商談会やセミナーに参加することで、新たな取引先や協力会社との出会いが期待できます。
補助金や助成金の積極的な活用
工務店の資金繰り改善策として、補助金や助成金の活用は非常に有効です。国や自治体が提供する支援制度を積極的に利用することで、資金調達の負担を軽減し、事業の安定化や成長につなげることができます。
住宅建築に関連する補助金として以下があります。
- ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス(ZEH)支援事業
- 長期優良住宅化リフォーム推進事業
これらの補助金を活用することで、工務店の受注拡大と収益性の向上が期待できます。
工期短縮
工務店の資金繰り改善策として、工期短縮は非常に重要な取り組みです。工事の完成までに要する期間を短縮することで、売掛金の回収を早め、キャッシュフローを改善することができます。
また、工期短縮は顧客満足度の向上にもつながり、受注機会の拡大が期待できます。
工期短縮を実現するためには、以下が不可欠です。
- 工程管理の徹底
- 社内体制の整備
- 協力会社との緊密なコミュニケーション
工事の各工程における作業内容や必要な資材、人員配置などを詳細に計画し、進捗状況を定期的に確認することが重要です。
そして、工程管理の責任者を明確にし、各部門間の連携を強化することが求められます。
少人数での経営体制構築
工務店の資金繰り改善策として、少人数での経営体制の構築は重要な選択肢の一つです。人件費は工務店の固定費の大きな部分を占めており、適正な人員配置により、コスト削減と効率化を図ることができます。
少人数経営を実現するためには、以下施策が不可欠です。
- 業務プロセスの見直しと改善
- IT化の推進
- 外注先との連携強化
工事の各工程における作業内容を分析し、無駄や重複を排除することで、業務の効率化を図ることができます。
さらに、受注や見積もり、発注などの業務をシステム化することで、人的負荷を軽減し、ミスを防ぐことができます。また、施工管理にタブレット端末を導入するなど、現場の効率化にもつながります。
工務店の経営を安定させる効果的な集客方法
工務店の経営を支えるのに欠かせない集客方法について説明します。
SNS
近年、SNSの普及により、工務店の集客方法は大きく変化しています。FacebookやInstagram、TwitterなどのSNSを活用し、自社の魅力を発信することで、潜在顧客との接点を増やすことができます。
例えば、
- Instagram:施工事例の写真や動画を投稿
- FacebookやTwitter:お客様の声や社員の日常など、工務店の「顔が見える」情報を発信
SNSを活用する際には、ターゲットとする顧客層を明確にし、その属性に合わせた情報発信を心がけることが重要です。
コンテンツマーケティング
工務店の集客において、コンテンツマーケティングは非常に有効な手法です。住宅建築や暮らしに関する有益な情報を発信することで、潜在顧客との接点を増やし、信頼関係を構築することができます。
ブログやWebサイト、メールマガジンなど、様々なチャネルを活用し、継続的に以下のようなコンテンツを配信していくことが求められます。
- 住宅建築に関するノウハウや注意点を解説するブログ記事
- 住まいのアイデアを提案するメールマガジン
- お客様の声を紹介するWebサイトのコンテンツ
顧客の関心に合わせた多様なコンテンツを制作することが効果的です。その際、自社の専門性や強みを活かしたオリジナリティのある内容にすることが重要です。
また、コンテンツの制作においては、SEOを意識することも欠かせません。
口コミのシステム化
工務店の集客において、口コミは非常に大きな影響力を持っています。満足度の高い施工やサービスを提供することで、顧客からの口コミを獲得し、新規顧客の開拓につなげることができます。そのためには、口コミを生み出す仕組みづくりが重要です。
例えば、施工後のアンケートやヒアリングを徹底し、顧客の満足度を定量的に把握することが効果的です。高評価の施工事例については、写真や動画を交えてWebサイトやSNSで紹介し、口コミの拡散を促すことができます。
また、顧客の許可を得た上で、施工後の感想や評価を動画インタビューで収録し、プロモーション素材として活用するのも一つの方法です。
さらに、口コミの獲得にはアフターサービスの充実も欠かせません。定期的な点検やメンテナンスを行い、顧客の満足度を維持・向上させることが重要です。
展示会や地域イベントへの参加
工務店の集客において、展示会や地域イベントへの参加は非常に有効な手段です。自社の強みや特長を直接アピールすることで、潜在顧客との接点を増やし、商談機会の創出につなげることができます。
また、地域社会とのつながりを深めることで、信頼感や知名度の向上も期待できます。
例えば、住宅展示会への出展は、自社の施工事例や技術力をPRする絶好の機会です。モデルハウスや実物大の構造模型などを展示し、来場者に強いインパクトを与えることができます。
地域イベントへの参加も、工務店の認知度向上に大きく貢献します。お祭りやスポーツ大会、環境美化活動など、地域社会との触れ合いの場に積極的に参加することで、工務店の存在感を高めることができます。
まとめ
工務店経営には、新型コロナウイルスの影響や資材高騰、人材不足など、様々な課題が存在します。しかし、これらの課題に的確に対応し、自社の強みを活かした経営を行うことで、困難な状況を乗り越え、持続的な成長を実現することができるでしょう。
経営改善の取り組みにおいては、自社の状況を正しく把握し、優先順位を明確にした上で、実行可能な計画を立てることが重要です。工務店経営者の皆様には、本記事で提示した課題と解決策を参考に、自社の経営力強化に向けた一歩を踏み出していただきたいと思います。
経営者の強いリーダーシップのもと、社員一丸となって取り組むことで、必ずや明るい未来を切り拓くことができるはずです。もし、施策実行に伴って疑問点や懸念点があるなら、弊社コンサルタントとも連携しながら、経営改善プロジェクトにチャレンジしてみてください。
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是非、創業からの想いを、お聞かせ頂くところからスタートしたいと思っておりますので、
お手数ではございますが、下記フォームよりお願いいたします。
工務店の経営でのよくある質問
工務店経営におけるデジタル化のメリットは?
工務店経営におけるデジタル化のメリットは主に以下の2点です。
- 業務プロセスの自動化と効率化
受注管理、見積作成、発注業務、工程管理など、様々な業務をシステム化することで、作業時間の短縮とミスの防止が可能となります。その結果、生産性の向上と受注機会の拡大につながります。 - データ活用による顧客理解の深化と新規顧客獲得
顧客情報や営業活動のデータを蓄積・分析することで、顧客ニーズの把握や効果的なマーケティング戦略の立案が可能となります。また、デジタルマーケティングを活用することで、潜在顧客との接点を増やし、効率的な集客が期待できます。
デジタル化により、業務効率化とマーケティング力強化の両面から、工務店経営の課題解決と成長につなげることができるのです。
工務店が資金繰りを改善するための方法は?
工務店が資金繰りを改善するための具体的な方法は以下の通りです。
- 現金流管理の徹底と予測精度の向上
- クラウドファンディングや地域金融機関との連携
- 補助金や助成金の積極的な活用
- 工期短縮による売掛金の早期回収
- 少人数での経営体制構築によるコスト削減
これらの方法を組み合わせることで、キャッシュフローの安定化と収益性の向上を図ることができます。
特に、補助金や助成金の活用は、初期投資の負担を軽減するために有効です。
また、金融機関との連携により、資金調達の選択肢を広げることも重要です。
工務店経営者には、自社の状況に合わせた資金繰り改善策を検討し、実行していくことが求められます。