またGoogleコアアップデートが始まりました。アップデートは敵?味方?

2024年11月11日(日本時間12日)に、Googleは今年最後になる可能性が高いコアアップデートをリリース開始しました。この記事執筆時には、コアアップデートらしい派手な変動が見られたとの報告は上がっていないようです。それでも、まだまだ動きを注視する必要はあるでしょう。

SEOを土俵にしている限り、当面はGoogleのアルゴリズムアップデートから逃げることはできません。コアアップデートとは何か、Googleの狙いは何かをこれまでのアップデートの歴史から考察してみました。

Googleアップデートの種類と影響範囲

Googleのアップデートは、検索エンジンの品質向上を目的とした検索アルゴリズムの調整プログラムです。その影響は検索結果の表示順位変動にとどまらず、企業のウェブマーケティング戦略全体を左右します。

アップデートは大きく分けて以下の6種類に分けられます。

コアアップデート

コアアップデートは、Googleが”検索品質の向上”を目指して実施する包括的なアルゴリズム更新です。その特徴と実務的な影響について、具体的に解説します。

第一に、検索順位の変動が広範囲に及ぶことです。Googleの公式発表によれば、コアアップデートは検索結果全体に影響を与えるため、特定の産業や地域に限定されません。多くのサイトで全体の表示順位が大きく変動し、それに伴ってオーガニック検索からの流入構造が根本から変化しました。

第二に、変動の永続性です。従来の小規模アップデートと異なり、コアアップデートによる変動は、対策を講じない限り改善しない特徴があります。これは、Googleが公式ブログで明確に示している方針です。

プロダクトレビューアップデート

プロダクトレビューアップデートは、2021年4月から実施されている商品レビューコンテンツに特化したアップデートです。このアップデートの本質は、単なる製品情報の羅列やスペック比較ではなく、実際の使用経験に基づく深い洞察を重視する点にあります。

GoogleはSearch Central Blogで、質の高いレビューの具体的な要件を以下のように明示しています。

  • 製品の実物写真や動画による検証
  • 類似製品との比較検証データ
  • 製品の長所短所の具体的な使用シーンでの説明
  • 想定される顧客層ごとの推奨度の違い

特筆すべきは、このアップデートがECサイトだけでなく、製品紹介を含むメディアサイト全般に影響を与える点です。

スパムアップデート

スパムアップデートは、検索品質を低下させる悪質なコンテンツを特定・排除するためのアルゴリズム更新です。注目すべきは、このアップデートが意図的なスパム行為だけでなく、品質管理が不十分な一般的なサイトにも影響を与える点です。

Googleの品質評価ガイドラインによると、以下のような要素が「スパム的」と判断される可能性があります。

  • 過度なキーワードの詰め込み
  • 他サイトからのコンテンツの無断転載や機械的な言い換え
  • 人工的なリンクネットワークの構築
  • ユーザー価値の低い自動生成コンテンツ

特に近年は、生成AI技術の発展に伴い、大量の自動生成コンテンツが問題視されています。Googleのスポークスマンであるジョン・ミューラー氏は、AIによる大量生成コンテンツを「スパムの新しい形態」として警告しています。

ページエクスペリエンスアップデート

ページエクスペリエンスアップデートは、ユーザー体験(UX)を重視したGoogleの重要な評価指標です。このアップデートの核心は、技術的な性能指標「Core Web Vitals」にあります。

Core Web Vitalsは、以下の3つの具体的な指標で構成されています。

  • LCP(Largest Contentful Paint):メインコンテンツの読み込み速度
  • FID(First Input Delay):ユーザーの操作に対する応答性
  • CLS(Cumulative Layout Shift):視覚的な安定性

特筆すべきは、これらの指標が定量的に測定可能で、Google Search Consoleで具体的な数値として確認できる点です。

例えば、ページの読み込みは2.5秒以内が望ましいとされ、これを超えると検索順位に影響を与える可能性があります。特に、スマートフォンでの閲覧が主流となった現在、この基準を満たせないサイトは、徐々に検索結果から姿を消していくことになるでしょう。

ヘルプフルコンテンツアップデート

ヘルプフルコンテンツアップデートは、”人間のために作られた有益なコンテンツ”を重視する近年最も重要なアップデートです。Google Search Centralのダニー・サリバン氏によれば、このアップデートは”検索者の意図に応える”ことを最重要視します。

Googleが単なる情報の網羅性ではなく、実践的な価値を持つコンテンツを優先的に評価するという方針です。

以下のような内容は低評価となります:

  • 検索トレンドのみを追った浅いコンテンツ
  • 既存コンテンツの言い換えや要約
  • 一般的な情報の羅列
  • AI生成による没個性的なコンテンツ

ローカル検索アップデート

ローカル検索アップデートは、地域密着型ビジネスの検索表示に特化したアルゴリズム変更です。重要なのは、このアップデートが実店舗とオンラインの融合(O2O)を促進している点です。

Googleが重視する要素は以下です。

  • 営業時間の正確さ
  • 店舗写真の鮮度
  • クチコミへの対応状況
  • 投稿の更新頻度
  • 予約・注文機能の整備状況

特に注目すべきは、Googleビジネスプロフィールの重要性です。ここでの情報更新が、ローカルパックと呼ばれる地図付き検索結果の表示順位に直接影響します。

20年間のGoogleアップデート史から学ぶ特徴

Googleのアップデート史は、そのままデジタル時代の経営環境の変遷を表しています。2003年から現在まで、アップデートの背景には常にユーザーファーストの思想があり、その実現方法は技術の進化とともに洗練されてきました。この歴史を理解することは、今後の変化を予測し、適切な投資判断を行う上で重要な示唆を与えてくれます。

2003年フロリダアップデート

フロリダアップデートは、Googleが初めて実施した大規模なアルゴリズム変更です。それまでの検索エンジンは、単純なキーワードの出現頻度で順位を決定していました。キーワードを大量に詰め込んだ商品ページが上位を占めており、特に年末商戦期には、大手ECサイトによる検索結果の寡占が問題視されていました。

このアップデートは、機械的な評価から、コンテンツの質を重視する評価への転換点となりました。このアップデートで注目すべきは、単純なキーワードの出現頻度ではなく、ページの意図を分析する仕組みが導入された点です

当時のSEO業界では「Googleがeコマースサイトを排除している」という誤解が広がりましたが、実際には、ユーザーが求める情報をきちんと提供しているかどうかを判断する仕組みでした。

この変更により、『検索キーワードへの対策』から『ユーザーへの価値提供』へと、企業のウェブマーケティングの焦点が移行していきました。

2011年パンダアップデート:品質の低いサイトが一斉に圏外へ

パンダアップデートは、情報の信頼性を重視する評価方法への転換点となりました。

2011年頃、広告収入を目的とした『コンテンツファーム』と呼ばれるサイトが増加していました。これらのサイトは、他サイトの内容を機械的に収集・加工し、大量のページを生成していたのです。

注目すべきは、このアップデートが導入した「品質スコア」という概念です。これは、サイト内のコンテンツ全体を評価し、一部のページの低品質がサイト全体の評価に影響を与えるというものでした。

例えば、一部の記事が充実していても、サイト全体に薄いコンテンツが多ければ、全体の評価が下がることになりました。これにより、企業はウェブサイト全体の品質管理を意識せざるを得なくなったのです。

2012年ペンギンアップデート:被リンク戦略の転換点

ペンギンアップデートは、当時一般的だった人工的なリンク構築手法の有効性を大きく低下させました。2012年以前は、外部サイトからのリンクを増やすことがSEOの基本とされ、月額数万円でリンクを購入できる仕組みが広く普及していました。(今でも数少ないですが生き残っているようです。)

このアップデートでは、リンクの文脈を重視する評価方法が取り入れられました。具体的には、リンクを設置しているページの内容、リンクの前後の文章、リンク元サイトの性質など、複数の要素からリンクの自然さを判定します。

例えば、異なる業種のサイトから突然大量のリンクを受けている場合や、サイドバーやフッターに機械的に設置されたリンクは、不自然なものとして評価が下がりました。その結果、リンク購入に依存していた多くのサイトが検索順位を落とし、なかには完全に検索結果から除外されるケースも出てきました。

この変更により、外部リンクの獲得方法は、価値のある情報を提供し、それが自然に引用されることを目指すアプローチへと変化していきました。

2013年ハミングバードアップデート:検索意図に沿った結果表示

ハミングバードアップデートは、検索エンジンの理解力を大きく向上させた変更です。それまでの検索エンジンは、入力されたキーワードと完全に一致する情報を探すことに重点を置いていました。しかし、このアップデートにより、検索キーワードの背後にある利用者の意図を理解し、それに応える情報を表示できるようになりました。

具体的な例を挙げると、『新宿 ラーメン』という検索に対して、以前は単純にこの2つの単語を含むページを表示していましたが、このアップデート以降は『営業中の店舗』『人気度』『アクセス方法』といった、実際に店舗を訪れる人が必要とする情報を優先的に表示するようになりました。

2015年モバイルフレンドリーアップデート:スマホ対応の遅れが命取りに

モバイルフレンドリーアップデートは、スマートフォンでの閲覧体験を重視する明確なシグナルとなりました。当時、多くの企業サイトはPCでの表示を基準に作られており、スマートフォンでは文字が小さすぎたり、ボタンが押しにくかったりする状態でした。

このアップデートでは、スマートフォンからの検索時に、モバイル対応していないサイトの表示順位が大きく下がるようになりました。

注目すべきは、このアップデートが単なるスマートフォン対応の要請ではなく、ユーザーの行動変化への対応を求めるものだった点です。実際、現在では多くのユーザーがスマートフォンを主要なインターネットアクセス手段としており、モバイルファーストの考え方は、ウェブサイト設計の基本となっています。

2019年BERTアップデート:キーワードの文脈理解が向上

2019年のBERTアップデートは、自然言語処理の進歩をGoogle検索に組み込んだ重要な変更です。このアップデート以前の検索エンジンは、前置詞や接続詞などの機能語を十分に理解できていませんでした。例えば、『アメリカ から 日本』と『アメリカ へ 日本』の違いを正確に区別できていなかったのです。

このアップデートにより、検索エンジンは文脈や言葉のニュアンスをより正確に理解できるようになりました。例えば、『子供 熱 何度 病院』という検索では、単に「熱」と「病院」を含むページではなく、「小児科の受診目安」や「子供の発熱時の対応方法」など、より状況に即した情報が表示されるようになりました。

このアップデートは特に、専門分野の情報を扱うサイトに大きな影響を与えました。医療、法律、金融など、文脈の理解が重要な分野では、より正確で具体的な情報提供が求められるようになったのです。

 

2021年コアウェブバイタル:表示速度が売上を左右する時代へ

コアウェブバイタルの導入は、ウェブサイトの技術的な性能を評価基準として明確化した変更です。このアップデートで重視されたのは、以下3つの要素です。

  1. ページの読み込み速度
  2. 操作への反応性
  3. 表示の安定性

特に、スマートフォンでの表示速度の遅さは、直接的に検索順位の低下につながるようになりました。

このアップデートは、ウェブサイトの制作・運用において、デザインや情報設計だけでなく、技術的な性能も重要な検討事項であることを示しました。

2022年ヘルプフルコンテンツアップデート:ユーザーにとって本当に役立つコンテンツを推進

ヘルプフルコンテンツアップデートは、「人間のために書かれた」コンテンツを重視する変更です。このアップデート以降、検索上位に表示されるためには、実際の経験や専門知識に基づく独自の視点が不可欠になりました。

このアップデートは、コンテンツ制作の方法論を大きく変えました。SEOを意識した網羅的な情報提供より、特定の課題に対する具体的な解決策の提示が重視されるようになったのです。

 

2023年E-E-A-T(専門性・経験・権威性・信頼性)の重要性強化

2023年のE-E-A-T重視への移行は、オンライン情報の信頼性をより厳密に評価する動きを示しています。特筆すべきは、従来のE-A-T(専門性・権威性・信頼性)に『経験』の要素が加わった点です。

この変更は、情報の発信者に対する要件を具体化しました。例えば、美容関連の記事では、美容師や皮膚科医といった資格保持者の監修だけでなく、実際の施術経験や症例数も重要な評価要素となりました。不動産情報では、物件データの掲載だけでなく、実際の取引経験や地域特性の理解が求められています。

この動きは、AIによる大量生成コンテンツが増加する中で、実務経験に基づく知見の価値を再確認するものでした。企業にとって、自社の実務経験をいかに効果的にコンテンツ化するかが、重要な課題となっています。

2024年コアアップデートの傾向

2024年のコアアップデートは、AI時代における情報の質の担保と、中小企業のデジタルプレゼンス確保という、一見相反する課題への対応を示しています。

2024年3月:低品質なコンテンツの表示を大幅に減少

3月のアップデートは、生成AIツールによる大量生成コンテンツへの対応が主眼でした。このアップデートでは、文章の完成度よりも、情報の信頼性や独自性が重視されています。

具体的な変化として、定型的な商品説明や、一般的な情報の言い換えに留まるコンテンツの表示順位が低下しました。代わりに、実際の使用経験や、具体的なデータに基づく分析を含むコンテンツが評価されるようになっています。

 

2024年8月:小規模および独立系ウェブサイトに配慮した調整

8月のアップデートは、中小企業や個人事業主のデジタルプレゼンスを確保するための調整という側面があります。大手企業と比べてリソースの限られる中小企業でも、その分野における実践的な知見や地域に根ざした情報を提供できれば、検索結果で適切に評価される仕組みが強化されました。

長期的に安定したサイト運営を実現する体制づくり

これまでのGoogleアップデートの歴史が示すように、検索エンジンの評価基準は常に変化しています。しかし、その根底にある『ユーザーにとっての価値提供』という原則は一貫しています。

この原則に基づいた持続可能なサイト運営体制の構築が、今後の企業にとって重要な課題となっています。

PDCAサイクルの構築:毎月やるべきチェック項目

サイト運営におけるPDCAサイクルは、数値的な分析と定性的な評価の両面から構築する必要があります。

まず重要なのが、GoogleサーチコンソールとGoogleアナリティクスのデータ分析です。検索クエリごとの表示回数や順位の変動、流入後のユーザー行動を定期的に確認することで、コンテンツの効果測定が可能になります。

これらの情報を基に、毎月のコンテンツ更新計画を立案し、その効果を測定する。このサイクルを継続的に回すことで、アップデートに左右されにくい安定的なサイト運営が可能になります。

 

コンテンツ制作:効率的な更新体制の作り方

コンテンツ制作体制では、社内の知見を効果的に引き出し、体系化する仕組みづくりが重要です。

特に中小企業では、日々の業務で得られる実践的な知見を、いかに効率的にコンテンツ化するかがポイントとなります。例えば、顧客との商談や相談内容を定期的に整理し、よくある質問や課題をコンテンツのテーマとして活用する。また、社内の専門家の知見を引き出すため、定期的なインタビューやケーススタディの作成を制度化することも効果的です。

ただし、コンテンツの質を担保するため、事実確認や表現の統一性を確保するチェック体制は必須です。経験値の高いスタッフによる監修プロセスを確立することで、情報の正確性と専門性を確保できます。

まとめ

Googleのアップデートは、一見すると技術的な変更に見えますが、本質的には『価値ある情報をユーザーに届ける』という、ビジネスの基本に関わる変更です。

その実現には、場当たり的な対応ではなく、継続的な改善体制の構築が不可欠です。まずは自社サイトの現状を数値で把握することから始め、社内の知見を効果的に発信できる体制づくりを進めていくことが望ましいでしょう。外部の専門家に依頼する場合も、『検索順位を上げる』という表面的な目標設定ではなく、『ユーザーにとっての価値を高める』という本質的な視点での協業が重要です。

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