大規模サイトSEOを左右する「クロールバジェット」と「画像」
Googleは2025年5月13日に更新した画像SEOのベストプラクティスに関するドキュメントで、大規模サイトにおける画像管理とクロール効率に関して、非常に重要な推奨事項を追加しました。
追加されたのは以下項目です。
「大規模なウェブサイト内の複数のページで画像が参照されている場合は、サイト全体のクロール バジェットを考慮してください。特に、Google が画像をキャッシュに保存して再利用できるように、一貫して同じ URL で画像を参照するようにしてください。そうすることで、画像を複数回リクエストする必要がなくなります。」
つまり、サイト内の異なるページで全く同じ画像を掲載する場合、それぞれのページで異なるファイル名やパス、あるいは異なるパラメータが付いたURLで画像を読み込ませるべきではない、ということです。
これは、特に多くの共通画像をサイト内で使用している大規模サイトにとって、クロールバジェットの節約とサイト全体の効率化に大きく貢献する可能性を秘めています。
今回はクロールバジェットと画像SEOについて説明します。
クロールバジェットとは?
クロールバジェットとは、簡単に言えば「検索エンジンが特定のウェブサイトをクロールするために割り当てるリソース(時間や労力)の量」を指します。
よく勘違いされている点ですが、Googleが公式に「クロールバジェット」という用語で具体的な数値を公開しているわけではありません。
Googleは「ほとんどのサイト運営者はクロールバジェットを気にする必要はない」と述べています。しかし 、大規模サイト、複雑な構造を持つサイト、または頻繁にコンテンツが更新されるサイトを運営している方は例外です。
もし、数万ページ、あるいは100万ページを超えるサイトを管理している、または毎日新しいコンテンツが追加されるようなサイトを運営しているのであれば、クロールバジェットの理解と適切な管理は、SEO戦略の根幹を成す重要な課題となります。
クロールバジェットはSEOのランキングに直接関係するわけではありませんが、インデックス登録の前提となります。クロールされなければ、どれだけ優れたコンテンツも検索結果に表示されることはないからです。
画像とクロールバジェットの密接な関係
ウェブサイト、特に大規模サイトにおけるクロールバジェットの消費要因として、見過ごされがちながらも大きな影響力を持つのが「画像」です。適切に最適化されていない多数の画像は、知らず知らずのうちに貴重なクロールリソースを浪費している可能性があります。
ウェブページ上の各画像は、Googlebotにとって個別のHTTPリクエストとなります。つまり、1つのページに10枚の画像があれば、HTMLファイル本体に加えて10回のリクエストが発生し、それぞれの画像をダウンロードするためにクロールバジェットが消費されます。
大規模サイト、特に数千、数万点以上の商品画像を抱えるECサイトや、日々大量の画像付き記事を配信するメディアサイトにとって、これらの影響は深刻です。画像1枚あたりの非効率性は小さく見えても、サイト全体で考えれば、それはクロールリソースとサイト表示速度に対する膨大な負荷となります。
従来、同じ画像であっても異なるURL(例:パラメータが付与されたURLや、異なるファイル名で保存された同一画像など)で複数のページに使用されている場合、Googlebotはそれらを別々の画像として認識し、何度もクロールしてしまう可能性がありました。これは明らかにクロールバジェットの無駄遣いです。
【Google最新情報】同一画像・同一URLの推奨とは
冒頭で言及したように、Googleが2025年5月13日に更新した画像SEOのベストプラクティスに関するドキュメント によると、「大規模サイトにおいて、複数のページで同じ画像を使用する場合、一貫して同一のURLでその画像を参照すること」が強く推奨されています。
例えば、ページA、ページB、ページCというサイト内の異なるページで全く同じ画像(ピクセルレベルで同一の画像)を掲載する場合、それぞれのページで異なるファイル名やパス、あるいは異なるパラメータが付いたURLで画像を読み込ませるべきではない、ということです。
悪い例として以下のように、同じ画像なのにパスが異なるケースが挙げられます。
- ページA: https://example.com/images/product-image.jpg?v=1
- ページB: https://example.com/images/product-image.jpg?v=2
- ページC: https://example.com/images/new/product-image.jpg
上記ケースでは、ページA、ページB、ページCの全てで、同じ画像を参照する場合は https://example.com/images/product-image.jpg のように、完全に同一のURLを使用することが推奨されます。
他にも、ヘッダーロゴとフッターロゴで同じロゴ画像を使っているのに、わざわざlogo-header.pngとlogo-footer.png と異なるファイルにしてアップロードして表示しているケースもよく見られます。
この場合は、共通のhttps://example.com/assets/brand-logo.png と言ったファイル名を使用することが推奨されます。
Googleがこの推奨を行う理由とメリット
この推奨事項の最大の目的は、クロールバジェットの節約です。
同一画像に同一URLを使用することで、Googlebotはその画像を一度だけリクエストし、ダウンロードすれば済みます。その後、その画像はGoogleのキャッシュに保存され、他のページで同じURLが参照された際にはキャッシュから再利用されます。
これにより、同じ画像を何度もリクエストする必要がなくなり、サイト全体のクロールバジェットを大幅に節約できます。
Googleのこの推奨は、単にGoogle側のリソースを節約するためだけではなく、ウェブサイト運営者にとっても、Googlebotがより効率的にサイトをクロールし、新しい価値あるコンテンツを発見・インデックスする時間を増やすことに繋がります。これは、結果的にサイト全体のSEOパフォーマンス向上に貢献する重要な施策と言えるでしょう。
大規模サイトにおける重要性
小規模なサイトでは、この最適化による影響は限定的かもしれません。しかし、大規模なECサイト、メディアサイトにとっては、この推奨事項の遵守は非常に大きな意味を持ちます。
例えば、ECサイトでは同じ商品画像が商品詳細ページ、カテゴリページ、特集ページ、関連商品ウィジェット、プロモーションバナーなど、サイト内の様々な場所で使われるケースがあります。
メディアサイトでは、ライターのプロフィール写真、記事カテゴリを示す標準アイコン、シリーズものの記事で共通して使われるアイキャッチ画像などの共通画像が数百、数千回と参照されることもあり、URLが統一されていなければ、その都度クロールリソースが消費される可能性があります。
同一画像・同一URLを実現するアクションプラン
この最新の推奨事項を受けて、大規模サイトの運営者様は、自社サイトの画像管理方法を見直す必要があります。
現状の監査
サイト内で同一の画像が異なるURLで使われていないかを確認します。特に、CMSの仕様、画像管理システム(DAM)、開発チームの運用ルールなどによって、意図せずURLが分散しているケースがないか調査します。
URL正規化方針の策定
今後、新しい画像をアップロードする際や、既存の画像を更新する際に、どのようにしてURLの一貫性を保つかという方針を明確にします。これは、単なるSEO担当者の作業ではなく、コンテンツ戦略、アセット管理プロセス、開発ワークフロー全体に関わる戦略的な決定となります。
技術的対応
必要に応じて、CMSのテンプレート修正、画像配信ロジックの変更、リダイレクト設定(古い重複URLから正規の単一URLへ)など、技術的な対応を検討します。
大規模サイト特有の課題を克服!戦略的画像管理とクロールバジェット最適化
大規模サイトでは、画像の数だけでなく、サイト構造の複雑さやコンテンツ更新の頻度など、様々な要因がクロールバジェットと画像SEOに影響を与えます。ここでは、より戦略的な管理方法と、画像以外の要素も含めたクロールバジェット全体の最適化について解説します。
画像サイトマップ
通常のXMLサイトマップに画像情報を含めるか、画像専用のXMLサイトマップを作成することで、Googleに画像の存在と場所を明示的に伝えることができます。
これは特に、JavaScriptによって読み込まれる画像など、通常のクロールでは発見されにくい画像に対して有効です。画像サイトマップには、画像のURL、タイトル、キャプション、地理的位置などの情報を含めることができます。
CDN(コンテンツデリバリーネットワーク)経由で画像を配信している場合、サイトマップ内の画像URLにCDNのドメインを指定することも可能です。その際は、可能であればSearch ConsoleでCDNドメインの所有権を証明しておくことが推奨されます。
構造化データ (Schema.org)
ImageObjectスキーマをはじめ、商品 (Product)、レシピ (Recipe)、記事 (Article) といった各種スキーマタイプ内で画像プロパティ (image) を使用して構造化データをマークアップすることで、Googleが画像の内容やコンテキストをより深く理解するのを助けます。適切にマークアップされた画像は、Google画像検索で価格や評価などの情報が付加されたリッチリザルトとして表示される可能性があり、クリック率の向上に繋がることがあります。
まとめ
大規模サイトを運営する担当者様が直面する「クロールバジェット」と「画像」というテーマについて、その基本からGoogleの最新情報、具体的な実践テクニックまでを網羅的に解説してきました。
膨大なページ数を持つサイトにとって、Googlebotに効率的にクロールしてもらうことはインデックス登録とSEO成功の絶対条件です。最適化されていない画像はクロールリソースを浪費し、ページの表示速度を低下させる大きな要因となります。
Googleの最新推奨である「同一画像・同一URL」の原則を守ることで、大規模サイトで共通画像を多用する場合でもクロール効率を大幅に改善できます。これは、特に意識して取り組むべき新しい指針です。
大規模サイトにおける画像管理とクロールバジェットの最適化は、確かに複雑で継続的な努力を要する課題です。しかし、本記事でご紹介した戦略やテクニックは、その課題を乗り越え、着実に成果へと繋げるための明確な道筋を示しています。
もし、本記事の内容を自社サイトに具体的にどう適用すれば良いか分からない、あるいは専門的な知見に基づいた個別のコンサルティングが必要だと感じられた場合は、どうぞお気軽にご相談ください。経験豊富なコンサルタントが、お客様のサイト規模や特性に合わせた最適な戦略をご提案し、目標達成をサポートいたします。
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