ドメイン移管で検索順位が下がる??
企業のウェブ担当者様からよくご相談をいただくなかで、特に慎重な判断が求められるコンサルタント泣かせの案件が「ドメイン移管」です。
ウェブサイトの「住所」であるドメインを変更することは、ビジネスの大きな転換点となり得ますが、一歩間違えれば、これまで積み上げてきた検索エンジンからの評価を大きく損なう危険性もはらんでいます。
先日、海外SNSで興味深いポストが話題になりました。あるウェブサイトがドメインを移管したところ、検索順位が壊滅的に下落して、上記画像のようにアクセスが激減してしまったというのです。
参考記事: https://bsky.app/profile/mahesh-seo.bsky.social/post/3lrakydmqjk2w
このポストだけを見ると、「ドメイン移管は危険だ」と感じるかもしれません。しかし、Googleの専門家ジョン・ミューラー氏が上記ポストに返信しています。そして、順位下落の根本的な原因はドメイン移管という作業ではないことを説明しました。それよりも、ドメイン移管という大きな環境変化によってサイト全体がフレッシュに再評価されたことが原因でした。そして、ランキング急落の原因は、もともとサイトに存在していた「低品質で関連性の低いコンテンツ」にあったことが判明しました。
つまり、移管作業そのものの問題というよりも、ウェブサイトが元々抱えていた問題がドメイン移管という環境変化によって露呈してしまい、Googleからの評価を決定的に下げてしまったということです。
この事例は非常に重要な教訓を与えてくれます。ドメイン移管を成功させるためには、技術的な手順を正しく踏むことはもちろん、その前提として、移管先のウェブサイトがユーザーにとっても検索エンジンにとっても「価値あるもの」でなければならない、ということです。
今回は、ドメイン移管を検討している、あるいは将来的に可能性のあるすべてのウェブ担当者様に向けて、失敗しないための知識と手順を解説していきます。この記事を読んでくださっているあなたも、他人事だと思わずに、自社のウェブサイトの現状と照らし合わせながら、読み進めてみてください。
そもそも、どんな時にドメイン移管を検討するべきか
ドメイン移管にはリスクが伴います。だからこそ、「なぜ移管するのか」という目的を明確にすることが全てのスタート地点になります。ドメイン移管を検討すべきだと判断した主なケースは以下の通りです。
リブランディング(社名・サービス名の変更)
会社名や主力サービスの名前を変更した場合、ユーザーに新しいブランド名を覚えてもらうためにドメインも統一するのが自然な流れです。古いドメインを使い続けると、ブランドイメージが分散し、ユーザーに混乱を与えてしまいます。
事業の買収・統合
複数の会社やサービスが一つになる際、それぞれのウェブサイトを新しいドメインの下に統合するケースです。これにより、企業としての一貫したメッセージを発信し、SEOの評価を新しいドメインに集約させる狙いがあります。
より戦略的なドメインへの変更
現在のドメインが「覚えにくい」「長すぎる」「ビジネス内容を表していない」といった問題を抱えている場合も、移管の検討対象となります。例えば、co.jpドメインから、よりグローバルな印象を与える.comドメインへ変更したり、より短くキャッチーなドメインを取得したりするケースです。
中古ドメイン(オールドドメイン)の活用
これは上級者向けですが、過去に質の高いサイトで運用され、良い評価(被リンクなど)を引き継いでいる中古ドメインを取得し、そこに新しいサイトを構築する戦略です。ただし、ドメインの過去の運用履歴を徹底的に調査する必要があり、ペナルティのリスクもあるため、専門的な知見が不可欠です。
【重要】「移管しない」という選択肢も常に持つ
一方で、安易なドメイン移管は避けるべきです。例えば、「なんとなく今のドメインが気に入らない」「気分を変えたい」といった曖昧な理由で移管を検討するのは非常に危険です。
現状のドメインで多くのアクセスや収益が生まれているのであれば、その資産を失うリスクを冒してまで移管するメリットがあるのかを、天秤にかけて慎重に判断する必要があります。
サイト評価がゼロに?ドメイン移管に潜むSEO上のリスク
ドメイン移管が「ウェブサイトの心臓移植」に例えられることがあるほど、その影響は甚大です。ここでは、具体的にどのようなリスクが存在するのかを「技術的リスク」と「評価上のリスク」に分けて解説します。
技術的なリスク1:301リダイレクトの設定ミス
ドメイン移管の最重要項目です。旧ドメインの各ページから、対応する新ドメインのページへ「恒久的な転送設定(301リダイレクト)」を正しく行わないと、検索エンジンは新しいページを見つけることができず、旧ページが蓄積してきたSEO評価も引き継がれません。
「トップページだけリダイレクトして終わり」といったミスは致命的です。意外にこのミスが原因で、新サイトが全く順位がつかないと相談に来られる方も少なくありません。
必ずページ単位で1対1で設定しなければなりません。
技術的なリスク2:内部リンクの更新漏れ
サイト内のページ同士をつなぐリンク(内部リンク)が旧ドメインのURLのままになっていると、サイトの評価が分散したり、ユーザー体験を損ねたりする原因になります。
技術的なリスク3:サイトマップ・robots.txtの更新忘れ
検索エンジンにサイトの構造を伝える「サイトマップ(sitemap.xml)」や、クロールを制御する「robots.txt」を新ドメイン用に更新して正しく送信しないと、インデックスが正常に進みません。
技術的なリスク4:正規化(canonical)タグの記述ミス
ページのURLを正規化するcanonicalタグが旧ドメインを指したままだと、検索エンジンに「正しいURLは古い方ですよ」と伝え続けることになり、評価が正しく引き継がれません。
評価上のリスク1:一時的な順位下落とアクセス減少
どれだけ完璧に移管作業を行っても、検索エンジンが新しいドメインを認識し、再評価するには一定の時間がかかります。この期間は、検索順位やアクセス数が不安定になったり、一時的に減少したりすることを覚悟しておく必要があります。
冒頭の事例のように、サイト自体の品質に問題があると、この「再評価」のタイミングで、これまで見過ごされてきた問題点まで厳しくチェックされ、評価を大きく落とす引き金になるのです。
この期間は数週間から数ヶ月に及ぶこともあります。
冒頭の事例では、以下のような点が問題視されて、サイトとして大きく評価を下げてしまいました。
- 低品質なコンテンツの存在: ユーザーの役に立たない、質の低いページがサイト内に多くあって、それらのページも移管された。
- 関連性の低いコンテンツ: サイトのテーマと関係のないページが含まれていて、、それらのページも移管された。
これらの「質の低い」コンテンツがサイト全体の評価を下げ、結果的にドメイン移管というタイミングが引き金となって大きな順位下落を招いてしまったのです。
評価上のリスク2:被リンクの価値の損失
外部サイトから受けたリンク(被リンク)は、SEO評価の重要な要素です。301リダイレクトによって評価の大部分は引き継がれるとされていますが、弊社の経験でも100%ではないという感触があります。
また、リダイレクトを経由することで、ユーザーの離脱率がわずかに上がる可能性もゼロではありません。
評価上のリスク3:インデックスの混乱
移管後、一時的に新旧両方のドメインが検索結果に表示されてしまうことがあります。これはコンテンツの重複とみなされ、評価が分散する原因となり得ます。
失敗確率を極限まで下げる!ドメイン移管のベストプラクティス
リスクを理解した上で、それでも移管に踏み切る場合に、失敗の確率を限りなくゼロに近づけるための「ベストプラクティス」を、【準備】【実行】【移管後】の3つのフェーズに分けて解説します。
【準備フェーズ】すべての勝負はここで決まる
- 現状サイトの完全なデータバックアップと分析
- 新ドメインでテスト環境を構築
- サイトリニューアルとの同時実施は絶対に避ける
【実行フェーズ】慎重かつ迅速に
- ページ単位での301リダイレクトの徹底
- Google Search Consoleの「アドレス変更ツール」を使用
- 各種タグとファイルの更新
【移管後フェーズ】本当の戦いはここから始まる
- トラフィックと順位の定点観測
- クロールエラーの監視
- 主要な被リンク元への更新依頼
それぞれのステップを説明します。
準備1:現状サイトの完全なデータバックアップと分析
まず、Google Analyticsで現在の流入数、流入経路、コンバージョン数などを正確に把握します。そして、Google Search Consoleで、どのようなキーワードで流入しているか、どのようなサイトから被リンクを受けているかをすべてリストアップします。
さらに、ワードプレスであれば拡張機能、または専用のツールを使い、サイト内のすべてのURLをリスト化します。 この「移管前の健康診断」が、移管後の成果を測定する基準点になります。
準備2:新ドメインでテスト環境を構築
本番環境とは別に、新しいドメインでウェブサイトを構築し、外部からアクセスできないように設定します(ベーシック認証など)。このテスト環境で、リダイレクト設定や内部リンクの置き換えが正しく機能するかを徹底的にテストします。
準備3:サイトリニューアルとの同時実施は絶対に避ける
よくある失敗例が、ドメイン移管とサイトデザインの大幅なリニューアルを同時に行ってしまうことです。これをやると、もし順位が下落した際に、原因がドメイン移管にあるのか、サイトリニューアルにあるのかの切り分けが非常に困難になります。
原則として、プロジェクトは必ず別々に行いましょう。
実行1:ページ単位での301リダイレクトの徹底
旧サイトの全URLと、移管先の新URLの対照表(リダイレクトリスト)を作成し、それに基づいてサーバー側で301リダイレクトを設定します。
実行2:Google Search Consoleの「アドレス変更ツール」を使用
新旧両方のドメインをSearch Consoleに登録し、「設定」メニュー内にあるアドレス変更ツールを使って、Googleにドメイン移管を正式に通知します。これは非常に重要なシグナルになります。
実行3:各種タグとファイルの更新
内部リンク、canonicalタグ、hreflangタグ(多言語サイトの場合)などをすべて新ドメインのURLに書き換えます。
新ドメイン用のサイトマップを作成し、Search Consoleから送信します。robots.txtが正しく設定されているか確認します。
移管後1:トラフィックと順位の定点観測
Google AnalyticsとSearch Consoleのデータを毎日チェックし、移管前と比較して異常な減少がないかを確認します。主要なキーワードの検索順位をツールで追い続け、大きな変動がないか監視します。
移管後2:クロールエラーの監視
Search Consoleの「ページ」(インデックス作成)レポートを注視し、リダイレクトエラーや「404 Not Found」エラーが多発していないかを確認します。エラーが見つかった場合は、即座に原因を特定し、修正します。
移管後3:主要な被リンク元への更新依頼
準備フェーズでリストアップした被リンク元の中から、特に重要度の高いサイト(官公庁、業界団体、主要取引先など)のウェブマスターに連絡を取り、可能であればリンクを新しいドメインに更新してもらうよう依頼します。これは必須ではありませんが、丁寧に行うことでリスクをさらに低減できます。
まとめ
今回は、ドメイン移管について、その検討ケースからリスク、そして成功させるための具体的な手順までを解説しました。
よく、ドメイン移管は「会社の引越し」に例えられます。しかし、私はもっとシビアに「ウェブサイトの心臓移植」だと考えています。住所が変わるだけでなく、サイトの生命線であるGoogleからの評価という血液を新しい身体に正しく送り込まなければならない、非常に繊細で重要なオペレーションなのです。
あなたの会社の貴重な資産であるウェブサイトを、これからもさらに成長させていくために、今回の記事がその一助となれば幸いです。
この記事でご紹介したベストプラクティスを一つひとつ丁寧に行えば、失敗のリスクを大幅に減らすことができます。しかし、それでも不安が残る場合や、自社のリソースだけでは難しいと感じる場合は、決して無理をせず、経験豊富な専門家や外部パートナーに相談することも有力な選択肢です。
もし、本記事の内容を自社サイトに具体的にどう適用すれば良いか分からない、あるいは専門的な知見に基づいた個別のコンサルティングが必要だと感じられた場合は、どうぞお気軽にご相談ください。経験豊富なコンサルタントが、お客様のサイト規模や特性に合わせた最適な戦略をご提案し、目標達成をサポートいたします。
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