Chatwork株式会社決算説明資料のロジカル演出

決算説明会資料・株主総会資料・会社説明資料などのIR資料作成担当者の方にすぐ役立つ情報をお届けします。
Chatwork株式会社決算説明資料のロジカル演出
業務用チャットコミュニケーションサービスのChatwork株式会社が2022年5月に発表した第1四半期決算説明資料から、情報をロジカルに演出する効果的な手法について学べます。

まず目を引くのが、資料全体で貫かれる配色の統一感です。ブランドカラーであり、コーポレートカラーでもある赤と黒で統一されています。色を使い過ぎないことで、全体的にすっきりとした視認性の高い決算資料です。

以下のP.12「目標値を大幅に上回る売上成長を実現」ページを見るとその重要性がよくわかるのではないでしょうか?ベースカラーとその濃淡だけで、読者の視線を自然な形でコントロールすることに成功しています。

ちなみにこのページでは、あえて(だと思いますが)現在地点の2022年を淡色に抑えています。これからの展望に読者の視線と注意を誘導する巧みなテクニックです。
Chatwork株式会社決算説明資料

ベースカラーを絞ったからこそ強調色が効く

ベースの2色で統一されているからこそ、アクセントカラーが効いてきます。以下のP.13「目標値を大幅に上回る売上成長を実現」ページを見るとその重要性がよくわかるのではないでしょうか?
Chatwork株式会社決算説明資料
色数を絞っているからこそ、アクセントカラーの薄青色が効いていることがわかります。しかも、アクセントカラーを強調するためではなく、少し抑えめの明度で点線スタイルにして目標値を示すために用いるのは上級レベルの使用方法です。テキスト中の強調色とグラフの実績値を同じ赤にすることで、ロジカルに情報を演出しています。

KPI一覧を効果的に活用

SaaS企業であるChatworkならではの演出ですが、以下のP.14「KPIハイライト」のようにKPI(重要業績評価指標)の一覧を同一ページで見せることで説得力の高い資料になっています。

まず、視認性の高いフォントを上手に使ってKPIが配置されているので実に見やすいページです。加えて、16:9比率のフォーマットを巧みに活用して、きちんと余白を確保していることも視認性と説得力の高さに貢献しています。

KPIに関する説明は詳細な定義や要件などの注記が多くなり、ごちゃごちゃになりがちです。もちろんChatworkでも注記はありますが、思い切ってフォントサイズを落とし、必要最小限に絞ることで、まったくごちゃごちゃ感を感じさせません。
Chatwork株式会社決算説明資料
しかも、この資料のすばらしいところは、このページを単なるKPI一覧として終わらせていない点です。この後のページで以下のように各KPIの現状と展望を説明する流れになっています。つまり、KPIハイライトのページが移行ページの目次の役割も果たしているのです。
Chatwork株式会社決算説明資料
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あくまで目次の役割を果たすページと割り切っているからこそ、詳細な定義や要件などの注記は最低限に絞って、見やすさを優先できています。

最近のChatworkの決算資料は、毎回このようにKPIを一覧で見せ、各KPIの成長戦略を説明する流れで統一されています。このことも決算説明会で株主に与える安定感や安心感を生み出しているといえるでしょう。読者にとって、各KPIの成長戦略が非常にわかりやすい方法でロジカルに説明されている効果的な手法です。

まとめ

Chatwork株式会社の2022年12月期第1四半期決算説明資料から、IR資料作成で敷衍して活用できる部分は以下です。

【とても重要】

  1. 色を使い過ぎずベースカラーを2色に絞る→ベースカラーの濃淡を活用
  2. アクセントカラーはここぞというタイミングのみ
  3. KPIをすっきりした一覧で読者に提示
  4. KPI一覧を基に説明を展開

【実は重要】

  • 視認性の高いフォント
  • 16:9フォーマットの巧みな活用
  • 余白の確保

KPIを軸にして決算資料を展開するのはSaaS企業ならではと言えるかもしれません。KPIコンシャスで説明を展開するかどうかは、事業内容、事業ステージや経営状態によって様々でしょう。それでもどんな企業でも、経営陣と株主の間で共通認識されている指標は必ず存在するはずです。KPIをどう見せ、どう演出し、どう説明するかを考える時に今回のChatwork株式会社の決算説明資料はアイデアの宝庫と言えるでしょう。

参考:Chatwork株式会社 2022年12月期 第1四半期 2022年5月13日 決算説明資料

いかがでしたでしょうか?各企業のIR資料には様々な工夫が満載で、参考になるものばかりです。今回は、弊社の視点で解説いたしましたが、また違った見方もできるかもしれません。投資家へ想いを伝え、投資を引き出すツールとしてIR資料作成には悩みが付き物です。是非一度弊社コンサルタントと打合せしましょう!凝り固まった頭の中が少しばかりほぐれるかもしれません。