検索クエリーがより深くパーソナルに変わりつつある
Googleがマーケティング関連コラムを定期的に配信しているThink with Googleで興味深い記事が公開されていました。20214年1月に公開された「「〇〇 わかりやすく」「〇〇 なぜ」の検索増に見える、アイデンティティの深化」という記事です。
https://www.thinkwithgoogle.com/intl/ja-jp/marketing-strategies/search/2023-search-trend-1/
ここ数年弊社でも観察されてきた、検索ユーザーの変化を分かりやすく言語化してくれていた記事なのでご紹介したいと思います。と言っても、私が観察してきた経験、知見と合わさっての考察ですので、すべての意見がThink with Googleのこの記事と合致しているわけではありませんし、さまざまな方向に観点がジャンプするであろうことは先にお断りしておきます。
Think with Googleでの考察
まず、「「〇〇 わかりやすく」「〇〇 なぜ」の検索増に見える、アイデンティティの深化」記事を概観します。この記事では、2023年の日本における検索トレンドとして、「自分のアイデンティティを深めようとする人々」の増加が指摘されています。
具体的には、「〇〇 わかりやすく」「〇〇 なぜ」といった、トレンドに左右されない掛け合わせクエリの検索増加が挙げられています。これらのクエリは、過去5年間で増加傾向にあり、人々が自分の疑問や探究心を満たす情報を探し出そうとする姿勢を反映しているとのことです。
また、このトレンドは自分らしさの深化を象徴していると指摘されています。例えば「育休 なぜ」「控除 簡単に」といった検索クエリを通じて、自分の意見を多面的に形成し、税金の仕組みなどを理解しようとする意識が見られる、と考察されています。
世の中の一般的な動向を知るために主に使われてきた検索プラットフォームが「自分自身を見つめ、身の丈に合った情報を探求する場」としての役割を果たしていることを示唆しています。
たいへん興味深い考察ではないでしょうか。より詳細に、よりパーソナル(に近い)な情報をすくい取ってカスタマイズする動きは弊社で感じてきた傾向と一致します。過去のデータや予測だけでは不十分で、検索ユーザーの裸の検索意図を早期に発見することがますます重要になっています。
音声検索の影響
音声検索の利用は、スマートフォンとスマートスピーカーの普及に伴い、急速に増加しています。音声検索は、手がふさがっている時や移動中など、従来のキーボード入力が難しい状況でも情報を簡単にアクセスできるため、多くの方が使っているのではないでしょうか?私も外ではスマホ、家ではAmazon Echoを使って気軽に音声検索を使っています。
音声検索は、デジタルマーケティングにおいて重要なトレンドです。アメリカでは1億1,800万台以上のスマートスピーカーが使用されていると報告されています。日本国内でもスマートスピーカーの普及率は、2022年時点で16.1%と推計されています。加えて、2022年1月の調査ではスマートフォンの所有率は96.3%です。
2020年には、全スマートフォンユーザーの50%以上が音声検索を使用しています。また、2021年には、アメリカの消費者の58%がスマートフォンで音声検索を使用したという調査結果もあります。
雑に概算するなら、全消費者の半分近くは音声検索を使っていると考えても問題ないでしょう。
2010年代後半から急速に発展している音声検索が、多くの人の検索アクションを変化させているのではないかと弊社では考えています。
音声検索の普及で変わった検索クエリー傾向
このメルマガのメイン読者に合わせて、日本語での検索傾向に限定して話を続けますね。音声検索と従来のテキストベースの語句検索の違いは何でしょうか?いくつかの顕著な違いがあります。以下に、主な違いをいくつか挙げます。
会話口調と単語
- 音声検索: 音声検索クエリは、会話式の自然な言葉遣いで行われることが多いです。多くの人は自分が普段話すようにクエリを発します。
例:「明日の東京の天気は?」 - 語句検索: 従来のテキスト検索では、キーワードを中心とした簡潔な検索が一般的です。
例:「東京 天気 明日」
質問形式と単語
- 音声検索: 音声検索では質問形式を使うことが一般的です。ユーザーは自分の疑問を直接的に問いかける傾向があります。
例:「明日の東京の天気は?」 - 語句検索: テキストベースの検索では、質問形式よりもキーワードの羅列が多く見られます。
例:「東京 天気 明日」
検索クエリの長さ
- 音声検索: 音声による検索クエリは通常、より長く詳細になりがちです。
例:「明日の東京は何時頃からどれくらい雪が降る?」 - 語句検索: テキストでの検索は、短く具体的なキーワードで構成されることが多いです。
例:「明日 東京 雪 予報」「明日 東京 雪 時刻」など分割して検索
文脈と意図の明確さ
- 音声検索: 音声検索は、より文脈が豊かで、ユーザーの意図を明確に反映する傾向があります。
例:「明日午後から都心に出るから雪が降り始める時間教えて」 - 語句検索: テキスト検索では、文脈や意図を推測しづらい場合があります。これは、キーワードが短く簡潔であるために、全体的な検索の意図が不明瞭になることがあるからです。
音声検索がもたらしているこの変化は、これからのSEO戦略を考えていくうえで必ず必要になる視点です。
簡単に言うと、より長く詳細な内容を自然な会話的な言語でシステムに尋ねることに慣れてきたユーザーは、語句検索においても同じスタイルで検索しているのではないかと推測できます。
それが、初めに触れたThink with Googleで考察されていた検索トレンドの変化と結びついているように感じています。つまり「「〇〇 わかりやすく」「〇〇 なぜ」といった、トレンドに左右されない掛け合わせクエリによって、自分の意見を多面的に形成し、世の中の仕組みを理解しようとする人々の増加」のことではないかと考察しています。
日本の検索ユーザーが欧米化してきた証拠?
少し話が飛ぶかもしれませんが、音声検索の普及によって、以前から指摘されてきた日本と海外(特に英語圏)の検索アクションの違いが急激になくなっているように感じています。
日本と英語圏(特にアメリカ、イギリス、オーストラリアなど)における検索クエリの傾向には、以下のようないくつかの明確な違いが存在します。これらの違いは、グローバルな視点でビジネスを行う企業にとって重要なポイントとなります。
検索クエリの長さ
- 英語圏:自然言語に近い形式の長い検索クエリが多い
- 日本語:短いフレーズやキーワードによる検索が一般的
キーワードの構造
- 英語圏:主語+動詞+目的語の構造が一般的で、質問形式であることが多い
- 日本語:文末に動詞がくることが多く、検索クエリが断片的なフレーズで構成されることが多い
いかがでしょうか?日本語独自の検索クエリー傾向が、音声検索によって英語圏での検索傾向に近づいていると思いませんか?
検索クエリーの変化にどのように対応すべきか?
多くの人が日常会話のように検索エンジンと対話するようになったいま、サイト運営側には何が求められているでしょうか?
この傾向は、検索エンジンが単純なキーワードマッチングを超え、検索ユーザーの意図やコンテキストを理解しようとする方向へと進化していることを示しています。サイト運営者にとって、これは自社のウェブサイトやコンテンツを、単にキーワードを羅列するのではなく、ユーザーの自然な質問に応答できるように最適化する必要があることを意味します。
詳細でパーソナルなニーズへの対応
詳細でパーソナルなニーズへの対応も重要なトレンドとなっています。現代の消費者は、一般的な情報だけでなく、自分の状況やニーズに合わせた具体的でパーソナライズされた回答を求めています。
例えば「2024年の税制改正の影響は?」といった専門的な質問や、「子連れで楽しめる静岡県内の観光地は?」といった地域性や状況に応じた情報を求める検索に顕著に表れています。
私たちは、このようなユーザーのニーズに応えるために、より詳細なターゲット設定とセグメンテーションを行う必要があります。これには、ユーザーの検索意図を深く理解し、ユーザーの質問に対する直接的かつ具体的な答えを提供するコンテンツの作成が欠かせません。
個々の検索クエリーの検索ボリュームに囚われるのではなく、検索クエリーの背後にある検索意図の強さと緊急性を立体的に把握する能力が欠かせません。そして、個々ユーザーの興味やニーズに合わせたコンテンツを提供することが、より重要になってくるでしょう。
まとめ
冒頭で述べた、Think with Googleの記事から自由に飛躍しすぎましたが、これからのサイト運営は、自然言語検索の増加と、より詳細でパーソナルなニーズへの対応という検索の新トレンドを把握し、これらの変化に適応していかなければなりません。SEO分析ダッシュボードの数字だけでなく、その向こうにいるユーザー中心のコンテンツ戦略を採用し、ユーザーの検索体験の向上に注力することが、成功への鍵となります。
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