ユーザーエクスプローラーは、GA4(Googleアナリティクス4)の中でも特に注目されるツールの一つです。GA4は、従来のユニバーサルアナリティクス(UA)に代わり、2020年にリリースされました。
その背景には、プライバシー規制の強化や、クロスデバイス環境におけるユーザー行動の追跡ニーズの高まりがありました。ユーザーエクスプローラーは、こうした時代の変化に応じて、個別のユーザーごとに以下のような詳細な情報を確認できることが特徴です。
- 訪問履歴の追跡:各ユーザーがどのページを訪れたか、その順序や滞在時間を詳細に把握できます。
- デバイス情報の分析:ユーザーがスマートフォン、タブレット、デスクトップなど、どのデバイスを使用したのかを特定します。
- 行動のタイムライン表示:各イベントやアクションが発生したタイミングを時間軸で視覚化できます。
デジタルマーケティングにおいてGA4は強力なツールですが、その限界に気づいている方も少なくありません。「コンバージョンデータが正確なのか」「顧客行動の具体的な流れを見逃していないか」といった悩みは、多くの経営者が直面する課題です。
この記事では、GA4の限界を明らかにするとともに、ボットやスパムを除外するための具体策や、BigQueryとの連携によるデータ拡張の方法をご紹介します。さらに、コンバージョン目標の最適化やフィルタリング設定の実践例など、即実行可能な内容をお届けします。
この記事を読み終えた頃には、GA4の課題を解決し、データ駆動型の意思決定を加速させるための新たな視点を得られるでしょう。
目次
GA4(Googleアナリティクス4)ユーザーエクスプローラーの限界とは?
GA4のユーザーエクスプローラーは、特定のユーザーの行動を追跡できる優れた機能です。しかし、いくつかの重大な限界や制約も抱えています。
ボットやスパムデータの影響
GA4では、ボットやスパムトラフィックを除去するための基本機能が実装されています。この機能には、既知のボットトラフィックをフィルタリングする設定が含まれます。
GA4は高度な機械学習とAI技術を利用して、人間のユーザーとボットを自動的に識別し、フィルタリングします。この機能は、Google社内の研究とIAB(Interactive Advertising Bureau)が維持する国際的なスパイダーとボットのリストを組み合わせて実現しています。
しかし、この機能には以下のような限界が存在します:
- 未知のボットへの対応:既知のリストに含まれない新しいボットやスパムトラフィックは検出できない場合があります。
- カスタムフィルタリングの必要性:特定のIPアドレスやリファラースパムに対処するため、手動でフィルタを作成する必要があります。
- データの過剰フィルタリング:不適切に設定されたフィルタリングが、実際のユーザーデータを除外してしまうリスクがあります。
例えば、あるキャンペーンで予想以上のトラフィック増加が見られた場合、それがボットによるものであるか、真のユーザー行動によるものかを判別するのは困難です。異常なパターン(短時間での大量ページ訪問、既知のスパムリストに登録されたIPアドレスからのアクセスなど)を検出し、ボットとして判断する機能が強化されていますが、完全な判別は困難な場合があります。
操作性の複雑さ
GA4は強力な分析ツールですが、その多機能性ゆえに操作性が複雑であると感じるユーザーも多いです。特に、頻繁な更新により、設定変更や仕様変更の際に多くの工数が必要となる場合があります。
新機能や改善された測定方法が導入されるたびに、既存の設定を見直し、必要に応じて再設定する必要があります。新しいレポート形式や分析機能が追加されるたびに、ユーザーは新しい操作方法を学び、既存のレポートを再構築する必要があります。
仕様変更により、既存のカスタムレポートが機能しなくなる可能性があります。これらを新しい仕様に合わせて再構築する必要があります。
また、 GA4ではイベントベースの測定が中心となっており、多くのイベントを適切に設定・管理する必要があります。これには、カスタムイベントの作成やパラメータの設定など、細かな作業が含まれます。
プライバシー規制への対応課題
近年、GDPR(一般データ保護規則)やCCPA(カリフォルニア州消費者プライバシー法)など、プライバシー規制が厳格化している中で、GA4はこれらの規制に対応した設計がされています。しかし、これに伴いデータ収集や活用においていくつかの課題が生じています。
プライバシー規制により、ユーザーの同意なしにクッキーや個人識別情報を収集することが禁止されています。この制約は、ユーザー行動を詳細に追跡する上での大きなハードルとなっています。
GA4では、IPアドレスが自動的に匿名化されますが、これにより、地理的なデータ精度が下がる可能性があります。また、匿名化によってユーザーごとの詳細な分析が難しくなる場合があります。
特に、クッキーをオプトアウトしたユーザーのデータが欠落することで、データの網羅性が低下します。特定のユーザー層(クッキーを許可したユーザーなど)に偏ったデータが収集されるため、全体的なインサイトの信頼性が低下します。
顧客行動をより詳細に追跡するようGA4をカスタマイズする手法
様々な制約を抱えるGA4ですが、より詳細に顧客行動を追跡できるようカスタマイズする方法もあります。
イベントトラッキングのカスタマイズ
GA4のイベントトラッキングは、標準的な設定だけでなく、カスタマイズを行うことで、より詳細なデータを取得することが可能です。
GA4では、ユーザーの行動を「イベント」として記録します。イベントは以下の4種類に分類されます。
- 自動収集イベント
- 推奨イベント
- カスタムイベント
- 拡張計測機能イベント
標準のイベントでは、一般的な行動(クリックやページビュー)が記録されますが、特定のニーズに合わせたカスタムイベントを設定することで、より詳細なデータを収集できます。
GA4では、フォーム関連のイベントをより詳細に追跡できるようになっています。例えば、「form_start」、「form_submit」などのイベントを使用することで、フォームの開始から送信までの過程を詳細に分析できます。
また、動画再生の追跡に関しては、GA4の拡張計測機能を活用することで、より詳細なデータを収集できます。例えば、「video_start」、「video_progress」、「video_complete」などのイベントを自動的に追跡できます。
GA4とGoogleタグマネージャーを連携させることで、コード編集なしで柔軟なイベント設定が可能になります。たとえば、特定ボタンのクリックや、ユーザーのスクロール深度をトリガーとしてイベントを記録できます。
しかし、初心者にとってはハードルが高く、習得に時間がかかる可能性があります。また、一部のタグとの相性が悪く、予期せぬ不具合が発生するリスクがあります。
また、GA4では、カスタムパラメータの追加がより簡単になっています。例えば、GA4の管理画面から直接カスタムイベントを作成し、パラメータを追加することができます。
しかし、カスタムディメンションやカスタム指標の設定数に上限があるため、事前の設計が重要です。
BigQuery連携によるデータ拡張の方法
BigQueryは、Googleが提供するクラウド型のデータウェアハウスです。GA4のデータをBigQueryにエクスポートすることで、以下のような高度なデータ処理や分析が可能になります。
- クエリベースのデータ抽出:SQLを使用して、必要なデータを柔軟に抽出・加工できます。
- データの統合:CRMや広告プラットフォームなど、他のデータソースと統合して包括的な分析を実施できます。
- 大規模データの高速処理:GA4の膨大なデータを効率的に処理し、パフォーマンスに優れた分析が可能です。
BigQueryでは、複数の条件を組み合わせたセグメントを柔軟に作成できます。例えば、「過去1か月以内に特定の商品を閲覧したが購入に至らなかったユーザー」を抽出し、再ターゲティング施策に活用します。
BigQueryで加工したデータをTableauやLooker Studioなどの可視化ツールに連携し、カスタムダッシュボードを作成します。これにより、特定のKPIやビジネス目標に基づいたレポートを簡単に作成できます。
ただし、BigQueryの利用料金は、ストレージ使用量とクエリの実行量に基づいています。大量のデータや複雑なクエリを頻繁に実行すると、予想以上に高額な料金が発生する可能性があります。特に、ストリーミングデータの量が多い場合、コストが高くなる傾向があります。
また、データベースやエンジニアリング領域の知識が必要です。これは、技術的なバックグラウンドがないユーザーにとっては大きな障壁となる可能性があります。
正確なデータを取得するためのフィルタリング設定
GA4を活用して正確なデータを分析するためには、フィルタリング設定が重要な役割を果たします。特に、ノイズとなるデータや不正確なデータを排除することで、信頼性の高い分析結果を得ることができます。
フィルタリングは、不要なデータや誤ったデータが分析結果に影響を与えるのを防ぐために使用されます。主な目的は以下の通りです。
- 内部トラフィックの除外:従業員や開発者がテスト中に発生させたトラフィックを除外します。
- ボットやスパムの排除:ノイズとなる自動化されたトラフィックをフィルタリングします。
- 特定のデータのセグメント化:特定のキャンペーンや地域のデータのみを分析対象とする場合に活用します。
GA4では、ボットやスパイダーからのアクセスを自動的に除外する機能がデフォルトで搭載されています。これは、旧バージョン(UA)と比べて大きな進化点です。
ビジネス環境やトラフィックの状況に応じて、フィルタリング設定を定期的に更新します。新たに発生したボットトラフィックやIPアドレスの変更に対応するためです。
GA4では不十分?他のツールで顧客行動を補完する方法
高機能ですが、それゆえに数多くの制限を抱えるGA4だけでなく、外部ツールで顧客の行動分析を行うことも可能です。
セッションリプレイツールで具体的な行動を可視化
セッションリプレイツールは、ユーザーがサイトやアプリ内で行った操作を録画し、再生可能な形式で提供するツールです。GA4のような定量的なデータ分析ツールを補完し、ユーザー行動の質的な理解を深めるために重要です。これにより、以下のような具体的な行動データが得られます。
- クリックパターン:どのボタンやリンクが最もクリックされたか。
- スクロール行動:どの部分でスクロールが止まり、どのコンテンツが見られていないか。
- フォーム入力の挙動:どのフィールドで入力が中断されたか。
ただし、セッションリプレイツールの導入により、ウェブサイトのパフォーマンスに影響が出る可能性があります。また、ツールによってデータの保持期間が異なるため、長期的な分析が必要な場合は注意が必要です。
ヒートマップツールを活用した行動経路の把握
GA4で得られる数値データは、ユーザー行動の全体像を分析するのに役立ちますが、特定のページでの詳細な行動を視覚化するには、ヒートマップツールを活用するのが効果的です。ヒートマップツールは、ページ上でのクリック、タップ、スクロールの集中度を可視化し、ユーザーがどのようにコンテンツとインタラクトしているかを直感的に把握できます。
- クリックヒートマップ
ページ上でクリックされた箇所を色分けして表示します。これにより、ユーザーが最も興味を持った要素や、誤解されてクリックされた不適切なリンクを特定できます。 - スクロールヒートマップ
ページ全体のどの部分までスクロールされたかを可視化します。これにより、重要な情報がユーザーに届いているか、ページの設計を見直すべき箇所を特定できます。 - タップヒートマップ(モバイル特化)
スマートフォンやタブレットでのタップデータを記録し、ユーザーインターフェース(UI)の効果を分析します。
ただし、ピンポイントで1ページの分析しかできず、サイト全体の把握は困難です。また、ツールによってはサーバーへの負荷が大きくなる可能性があります。さらに、導入や使いこなしに一定のスキルが必要です。
ユーザーの動きと売り上げの数字を直結させる測定ツールをサイトに設置
多くの企業が抱える課題は「どの施策が本当に売上に貢献しているのか分からない」という不透明さです。GA4やその他の分析ツールは膨大なデータを提供してくれますが、その中から本当に重要な指標を見つけ出すのは至難の業です。
そこで、本当に欲しいユーザー行動情報だけをシンプルに測定できて、シンプルなテーブルで可視化できるトラッキングシステムを自社サイトに搭載できたらいいと思いませんか?
トラッキングシステムと言ってもサイトに数行のコード追加だけ
トラッキングシステムと聞くと、大掛かりなシステム変更やサイトの構造変更が必要になるのでは?と考えて二の足を踏む方も多いかもしれません。
しかし、実際には既存ツールをいくつか組み合わせることでシンプルにユーザーの動きを可視化できる機能を既存サイトに搭載できます。既存のウェブサイトに数行のコードを追加するだけで、サイト集客が抱える本質的な問いに明確な数字での答えを示します。
弊社スリードットでは、既存のウェブサイトに数行のコードを追加するだけで、サイト集客が抱える本質的な問いに明確な数字での答えを示すシステムを提供しています。
スリードットのトラッキングシステムでできること
スリードットのトラッキングシステムを使えば、以下をサイト上で簡単に測定できます。
- ユーザーがどこからサイトに流入したか:Google広告経由か、コラム記事へのオーガニック流入かなど
- 【最終的に】どのページのどのリンクからコンバージョンにつながったか
- そのコンバージョンが【いくらの】売り上げにつながったか
導入実績のある企業様からは、「はじめて広告費の真の効果が分かった」「データに基づいた予算配分ができるようになった」といった声をいただいています。
電話問い合わせやメールなど、明確なコンバージョン経路を既に設置しているサイトでぜひ実装をお勧めしたいツールです。まずは、顧客がどこから何人来て、どこから成約して、いくらの売り上げにつながっているのかを厳密な数字で確認したい経営者にお勧めしています。
「ブランディング」や「売り上げへの間接的な貢献」と言ったおためごかしの逃げ口上にうんざりされている方は一度お試しください。
まとめ
GA4はデジタルマーケティングにおける不可欠なツールですが、その限界を理解し、適切な補完策を講じることで、データ分析の精度を飛躍的に向上させることができます。ボットやスパムデータを除去するフィルタリング設定の見直しは、正確なデータ収集の第一歩です。
しかし、多くの企業が直面している本質的な課題は、膨大なデータの中から真に重要な指標を見出し、具体的な施策につなげることの難しさにあります。特に、マーケティング投資の費用対効果を正確に測定したい、あるいは優良顧客の行動パターンを把握したいというニーズに対して、GA4だけでは十分な解を得られないことがあります。
このような課題に対して、弊社スリードットでは独自のトラッキングシステムを開発し、企業様にご活用いただいています。このシステムは、GA4の基本的な分析機能を補完し、各マーケティング施策からの流入が生み出した具体的な売上の可視化を提供します。
スリードットのカスタムトラッキングシステムに関する詳細な情報や、具体的な活用事例については専門スタッフが丁寧にご説明させていただきますので、お気軽にご相談ください。
よくある質問
GA4でスパムトラフィックを完全に除去することは可能ですか?
GA4には既知のボットを除去するフィルタリング機能が標準装備されていますが、完全に除去するにはカスタム設定が必要です。特定のIPアドレスやリファラーからのトラフィックを手動でフィルタリングし、BigQueryを活用して異常なトラフィックパターンを検出することで、スパムトラフィックの影響を最小限に抑えることができます。
GA4でのコンバージョン目標はどのように最適化すべきですか?
コンバージョン目標を最適化するためには、まずビジネスゴールに基づいてKPIを明確に設定し、目標の優先順位を決定する必要があります。次に、不要な目標を削除し、ミクロ・ミドル・マクロの階層で目標を管理します。これにより、目標達成に向けた具体的な施策を効果的に進めることが可能になります。
WEBコンサルティング会社から届くレポートの、どこに注目すべきでしょうか?
最も重視すべきは「売上に直結する指標」とその「前後の数値」です。例えば、商談化率が低い場合、その前段階(問い合わせ内容の質、対応時間など)と後段階(成約率、客単価など)の数値も併せて確認します。
単なる増減だけでなく、「なぜその数値になっているのか」という背景の理解が重要です。レポートに記載がない場合は、これらの数値の追加を依頼することをお勧めします。現場の実感との整合性を確認する上で、これらの数値は必須となります。