水まわりトラブル・修理の地域SEO戦略「クラシアン」「水協」を比較

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水まわりトラブル・修理の地域SEO戦略「クラシアン」「水協」を比較

水漏れ、詰まり、水道部品交換など家庭の水まわりトラブルの解決で人気の以下2社のSEO戦略を比較しました。

  • クラシアン
  • 水協

ユーザーの地域限定度が高いBtoCでのSEO戦略であれば、業界を問わず効果の高い戦略展開の参考になると思います。特に、水協の戦略は中小プレイヤーがジャイアントに立ち向かうための戦略として参考になるでしょう。

クラシアンはネームバリューとリスティング広告を生かした業界トップならではの戦略

株式会社クラシアンは、1991年に神奈川県横浜市で創立された水道全般の工事・修理・リフォームを行う企業です。軽やかで覚えやすいメロディと時代時代の有名人の出演が印象的なテレビCMでおなじみではないでしょうか?家庭の水まわり緊急案件で駆け付けてくれる修理業者のイメージが強いですが、実は便器や浴槽・洗面台の交換など水道設備のリフォームや法人向けサービスも行っています。

幅広いクエリーで月間25万を超えるオーガニック流入

上記のAhrefs統計を見て分かるように、クラシアン公式サイトhttps://www.qracian.co.jp/のオーガニックトラフィックは月間25万を超える巨人サイトです。特に2020年11月頃からの伸びが著しいことがわかります。2020年11月頃は月間5万弱のトラフィックでしたから、この2年強で5倍のトラフィックに達していることがわかります。

興味深いのは以下のポイントです。

  1. コンテンツはとにかく幅広く潜在顧客から拾う
  2. エリア系キーワードはリスティング広告で狙う
  3. 目的ごとにドメインを使い分け

それぞれのポイントについて説明します。

公式サイトでは幅広いクエリーで潜在顧客を狙う

上記のAhrefsによるキーワード統計を見て分かるように、クラシアン公式サイトは以下のようなキーワードで検索上位を獲得しています。

  • 排水溝 臭い
  • 洗濯機 排水口 臭い
  • 洗濯機 排水口 掃除
  • キッチン 排水溝 つまり
  • トイレ 水漏れ
  • 台所 排水溝 臭い
  • トイレ 下水臭い
  • 換気扇 異音
  • お風呂 排水溝 臭い

SEOの専門家から見ても、獲得を狙うキーワードの選定が絶妙です。トラブル症状系のキーワードを重点的に徹底的に獲得していることがわかります。

実は、水道周りのトラブルで直接成約(CV)につながるクエリーの代表格は「エリア名 トラブル種類(例:トイレ詰まり」です。クラシアン公式サイトでは、あえてだと思いますがエリア系キーワードをSEOでは狙っていません。競争が熾烈で、かつ検索アルゴリズムのアップデートなどの外部要因によって不安定といえるエリア系キーワードSEOは切り捨てる決断をしているようです。後述しますが、エリア系キーワードはリスティング広告によってカバーしています。

ネームバリューがある、かつ資本力があるからこその選択とも言えますが、マーケティング全体の戦略を見据えて、会社としてどこにコストを投入するかの意思統一が徹底されているイメージです。

エリア系キーワードはリスティング広告で狙う

上記はGoogleで「トイレつまり 梅田」を検索した際の結果画面です。画面上部のリスティング広告枠でクラシアンが表示されていることがわかります。

前述した通り、クラシアン公式サイトでは、このようなエリア系キーワードをSEOで狙っていないようです。コストはかかりますが、より確実に検索画面の目立つ場所を確保できるリスティング広告を選択しているのだと思われます。

ちなみに、リスティング広告でのリンク先は上述の公式サイトではなく緊急連絡サイトのhttps://qracian365.com/です。このように、クラシアンでは目的に応じて複数ドメインを使い分けています。

目的ごとにドメインを使い分けて相互に被リンク

クラシアンでは以下のように、目的とエリアに応じて複数ドメインを使い分ける巧みな戦略を採用しています。

  • co.jp 公式サイト
  • com 緊急用でリスティング広告のターゲット
  • toilet-change.com トイレ交換
  • qracian-kyutouki.com ガス給湯器交換
  • biz 法人向けサービス
  • com 水まわり商品販売
  • net コンテンツサイト
  • info 支社・営業所ブログトップ
    各拠点ブログ
    qracian.info/tokyo/
    qracian.info/osaka/
    qracian.info/kagoshima/

そのうえで、各ドメイン間でリンクを構築して、被リンクを獲得しています。

上記は、Ahrefsで調査した公式サイトの獲得被リンクドメインのリストです。各事業、各拠点のドメインからまんべんなく被リンクネットワークを構築していることがわかります。

それぞれのサイトで目的の違いが明確であり、訪問するユーザーの属性や目的も広く幅を取れています。それでいて、事業展開にブレがありませんので各サイトの方向性は統一が取れています。被リンクを構築するのに理想的な関係性でしょう。

中古ドメインをフルに活用する水協

大阪市天王寺区に拠点を置く株式会社水協は、全国的にはクラシアンのようなネームバリューはありませんが、関西エリアで着実にシェアを伸ばしている水まわりのトラブル解決・修理業者です。SEOの面では複数の中古ドメインを巧みに活用する戦略を展開しています。

中古ドメインとは?

中古ドメインとは、過去に1度以上使用されていたドメインです。サイトの運営が終了するなどの理由で、ドメイン所有者がドメインの契約を終了して一定期間が経過すると、そのドメインは誰でも取得できる状態になります。

以下のようなメリットがあるとされています。

  • 過去サイトで獲得した被リンクを資産として活用できる
  • インデックスされるまでの期間が短い
  • 検索上位に表示されやすい(ドメインパワーが強い)

注意点としては、上記メリットはすべて確実に獲得できるわけではない点です。すべての点で「可能性がある」程度です。

逆にデメリットとしては以下が考えられます。

  • 過去の悪い評価も引き継いでしまう
  • ドメイン名と実態のアンマッチ
  • 取得コストが高額
  • 被リンク資産が有効でない

過去サイトで検索エンジンからペナルティを受けたりしている場合もあるので注意が必要です。また、過去サイトで獲得した被リンク資産については、どれくらい新サイトで効果を発揮するか不透明です。Googleは被リンクの数だけでなく、品質やサイト内容との関連性を重視するスタンスをより明確にしています。

はまればロケットダッシュで検索上位を獲得できますが、リスクも抱えているのが中古ドメインと言えるでしょう。

複数の中古ドメインをエリアごとに使い分ける

上記はすべて、水協が運営しているサイトです。エリアごとにドメインを変えてサイトを作っています。以下のようにエリアごとに異なるドメインです。

  • 北河内エリア eoe.or.kr
  • 京都エリア kyoto-protocol.jp
  • 阪神エリア kilimanjaroinitiative.or.ke

上記以外にも、弊社で調査した限りでは以下のようなドメインを各エリアで使用しているようです。

これらのほとんどが(他社様なので確実なことは言えませんが)中古ドメインのようです。サイト構造はほぼ同じですから、サイト制作コストは低く抑えることができます。

上記は水協が使用しているドメインの1つであるjkfals.comの獲得被リンクドメインのリストです。海外版のウィキペディアや国土交通省サイト、全日空など大企業や官公庁からの被リンクを獲得しています。もちろん水協が獲得した被リンクもあるかもしれません。しかし、被リンクドメインの種類の豊富さや幅の広さから見ると中古ドメインである可能性が高いと思われます。

中古ドメインは前述したように様々なリスクもありますので、「使える」中古ドメインをそろえるためにはかなりの試行錯誤があったものと思われます。それでも、これだけの被リンク資産をいきなり活用できるのは高品質な中古ドメインと言えるでしょう。

サイトの専門性を明確にしてエリア系キーワードに特化

上記は、Ahrefsで調査した水協の京都エリア専門サイト kyoto-protocol.jp の獲得キーワードリストです。一目でわかるように「水漏れ 京都」「水漏れ 山科区」「トイレつまり 京都」など、水まわりトラブル関連の「いますぐ」需要クエリーを根こそぎ獲得しています。クラシアンが、リスティング広告を使って広告費をかけて獲得している検索結果画面の上位枠をSEOで獲得しているわけです。

これを実現できているのは、京都エリア特化のサイトを作っているからでしょう。最近のグーグルはサイトごとの専門性、特殊性を高く評価する傾向にあります。特に、水回りトラブルの修理サービスのような、商圏が比較的狭く専門性の高い業種ではサイトの方向性を絞ることで該当カテゴリ内でのサイト評価を上げられる傾向があるようです。

サイトの方向性を限定する最も簡単な方法は、専用サイトを新規に立ち上げることです。しかし、新規ドメインでサイトを立ち上げて、グーグルからインデックスされて評価を得るには時間がかかります。ランクインするまでの機会損失を考えると受け入れられないでしょう。

そこで水協が活用しているのが中古ドメインと思われます。専用サイトを中古ドメインで立ち上げて、スタートのもたつき期間を省略しながら特化サイトとしての高評価を得る戦略でしょう。

まとめ

一つの企業が、事業ごとに特化サイトを展開する戦略は最近よく見られます。これからますます特化サイトは求められるでしょう。グーグルはサイトの専門性(Expertise)を高く評価することを明らかにしています。この潮流は当分変わるとは思えません。

特化サイトを中古ドメインで立ち上げるかどうかは、企業としての短期収益性と長期視点によって判断が異なるでしょう。中古ドメインの活用は確かにリスクはありますが、はまれば余計なコストをカットして目的に最短距離で直行できる手法です。