旅館・ホテルを運営する上で重要なのは、集客です。そして、集客には多様なマーケティング手法が必要です。
弊社でお問い合わせをいただくホテルのオーナー、経営者のなかには「マーケティング」という単語が出たとたんに腰が引けてしまったり、拒否反応を示す方が少なくありません。「なんか難しそう」「横文字ばかりで内容がつかみにくい」「効果が分かりにくい」と感じる経営者層の方が多いようです。
でも、実はよく話を伺っていくと、これまでやってこられた集客施策をより「選択と集中」を意識して行うのがマーケティングであるとわかり、拒否反応もなくなるのが常です。
本記事では、宿泊施設におけるマーケティングについて、WEBマーケティング、SNSマーケティング、イベントマーケティングなど代表的な手法を紹介します。さらに、実際に成功した宿泊施設のマーケティング戦略事例も紹介します。ご自分の施設に合わせたマーケティング戦略を考える参考にしてください。
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ホテル・旅館でのマーケティング戦略の重要性
厳しい競合環境にさらされるホテルや旅館などの宿泊施設にとって、マーケティング戦略は成功に欠かせない要素です。競合施設との差別化が欠かせません。
この競争激化の背景には、新規参入者の増加やオンライン予約の普及などが影響しています。顧客が多様化し、ニーズも変化している現代では、マーケティング戦略を立てることで、自社のサービスや施設の魅力を効率よくアピールし、集客力を高めることができます。
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顧客ニーズの把握とターゲット設定
効果的なマーケティング戦略を立てるためには、まず顧客ニーズの把握が欠かせません。顧客が求めていることを理解することで、ターゲットとなる顧客層を明確に設定することができ、それに合わせたサービスやプランの企画が可能になります。
顧客ニーズの把握には市場調査やデータ分析が不可欠で。詳細な市場調査により客層の特徴や需要を把握することで、効果的なターゲティングが可能になります。ターゲット設定を行うことで、効率的なマーケティング活動が実行でき、リソースの無駄撃ちを避けることができます。
ブランドイメージの構築と差別化
ホテル・旅館のマーケティング戦略では、ブランドイメージの構築が重要です。自社のブランドイメージを明確にし、それを活かした差別化を図ることで、顧客に選ばれる理由を確立できます。
ブランドイメージを効果的に構築するためには、以下の方法が効果的です。
- ユニークなコンセプトの開発
- 施設やサービスのデザインで印象を与える
- ソーシャルメディアやウェブサイトでのブランディングを強化
- 顧客からのフィードバックを活用し、改善に取り組む
- プレスリリースやイベントを通じてメディア露出を図る
きっちりと差別化されたブランドイメージは顧客の記憶に残りやすく、リピートや口コミによる新規顧客獲得につながるのが大きなメリットです。ブランドイメージの構築には、施設のデザインや内装、提供するサービスやアメニティ、そして従業員の接客や対応に至るまで、全ての要素が一貫したコンセプトで統一されることが望ましいでしょう。
ホテル・旅館で効果的なマーケティング手法とその特徴
数多くあるマーケティング手法は、それぞれ異なる特徴と効果があります。ホテル・旅館の経営者やマーケティング担当者は、自社のターゲット顧客やブランドイメージに合った手法を選択し、組み合わせることで、効果的なマーケティング戦略を構築できます。
ここでは以下のマーケティング手法について説明します。
- WEBマーケティング
- SNSマーケティング
- イベントマーケティング
- 口コミマーケティング
- アウトバウンドマーケティング
- メールマーケティング
定期的な効果測定や改善に取り組むことで、マーケティング活動の成果を最大限に引き出すことが可能です。
それぞれのマーケティング手法について説明します。
WEBマーケティング
WEBマーケティングは、インターネットを活用したマーケティング手法で、SEO対策やコンテンツマーケティング、オンライン広告などが含まれます。
ホテル・旅館では、公式ウェブサイトの改善や予約システムの最適化、ユーザーフレンドリーなデザインで顧客の予約確率を高めることが重要です。WEBマーケティングの特徴は、広範な顧客層へのリーチや効果測定の容易さ、費用対効果の高さが挙げられます。
Webマーケティングを行ううえでの注意点は「WEBを駆使した宿泊業界集客のポイント」で詳しく説明します。
SNSマーケティング
SNSマーケティングは、Facebook、Instagram、Twitterなどのソーシャルメディアを活用したマーケティング手法です。Webマーケティングの中の一手法とも言えます。ホテル・旅館では、SNS上での情報発信やキャンペーン実施、顧客とのコミュニケーションが重要になります。
SNSマーケティングの特徴は、口コミ効果やリアルタイムな情報共有、若年層へのアプローチが可能である点です。
イベントマーケティング
イベントマーケティングは、体験型のイベントやワークショップをホテルで実施して、ブランドやサービスの認知度を高める手法です。季節ごとのイベントやコラボレーション企画、地域資源を活用したイベントが効果的でしょう。
地域連携を図ることで、地域活性化や顧客満足度向上にも繋がります。イベントマーケティングの特徴は、顧客との直接的なコミュニケーションや体験を通じた記憶に残る印象、地域との連携が可能である点です。
口コミマーケティング
口コミマーケティングは、顧客からの良好な評価や感想を活用して、新規顧客やリピーターを獲得する手法です。特にホテル・旅館は、顧客が細かく口コミを調査します。
口コミが広がるのをただ待つだけではなく、口コミを誘起する攻めの施策が必要です。レビューサイトやSNSでの口コミ共有、顧客満足度向上に向けた施策が重要になってくるでしょう。
良い口コミが広がることで、ブランドイメージの向上やリピーターの獲得につながります。口コミマーケティングの特徴は、信頼性の高い情報源としての評価、顧客の満足度向上に直結しやすい点が挙げられます。
アウトバウンドマーケティング
アウトバウンドマーケティングはまさに「攻め」の姿勢を象徴するマーケティング手法です。具体的には、広告、ダイレクトメール、テレマーケティングなどを通じて、自社のメッセージを顧客に積極的に送り込む方法です。
ホテルや旅館の世界では、矢継ぎ早に打ち出されるプロモーションや、それぞれの顧客にピッタリの広告がアウトバウンドマーケティングと言えます。
しかし、アウトバウンドマーケティングで難しいのは’リーチ’と’効果測定’です。アウトバウンドマーケティングは、多くの顧客にメッセージを送る広範囲なリーチを可能にします。しかし同時に、このリーチの広さと、それがどれだけ具体的な予約や宿泊につながったかという効果測定は、難易度の高い挑戦ともなります。
適切な戦略とツールを活用すれば、アウトバウンドマーケティングの効果を最大限に引き出すことも可能です。
メールマーケティング
メールマーケティングは、顧客リストを活用して、メールで情報発信やプロモーションを行う手法です。既に関係性を持っている顧客をターゲットに絞って行う点がアウトバウンドマーケティングと異なります。ホテル・旅館では、ニュースレターや限定オファーを送付することで、リピーターの獲得や顧客満足度の向上に繋がります。
メールマーケティングの特徴は、顧客との直接的なコミュニケーションが可能であり、ターゲットに絞った情報提供ができる点です。また、効果測定が容易で、費用対効果も高いとされています。
WEBを駆使した宿泊業界集客のポイント
インターネットを活用したマーケティングは、宿泊業界においても非常に重要な役割を果たしています。以下では、宿泊業界におけるWEBを使ったマーケティングのポイントを解説します。
SEO対策とウェブサイトの最適化
SEO(検索エンジン最適化)対策は、検索エンジンでの自社ウェブサイトの表示順位を上げることを目的とした取り組みです。宿泊業界においては、潜在的な顧客が検索エンジンで宿泊施設を探すことが一般的であり、SEO対策は非常に重要です。
以下に、SEO対策のポイントをいくつか挙げます。これらのSEO対策を行うことで、検索エンジンでの表示順位が上がり、ウェブサイトへの流入が増えることが期待できます。
キーワード選定
検索ユーザーが入力する可能性のあるキーワードをリサーチし、適切なキーワードをウェブサイトのコンテンツタイトルや説明に盛り込むことが重要です。
リサーチのためにデジタルツールを使うことはもちろんですが、顧客に「どのように検索したか」直接リサーチするのも効果的です。
コンテンツの質向上
検索エンジンは、ユーザーにとって有益で価値のあるコンテンツを評価します。宿泊施設の魅力や周辺情報、イベント情報など、有益な情報を提供することで、検索エンジンでの評価が上がります。
テクニカルSEO
ウェブサイトの構造や内部リンク、メタデータなど、検索エンジンがウェブサイトを適切にクロールしてインデックスできるように最適化することが重要です。
モバイルファースト
スマートフォンでの検索が増えているため、モバイルでの閲覧が快適なウェブサイトを作成することが求められます。レスポンシブデザインやAMP(Accelerated Mobile Pages)を取り入れることで、モバイル対応を強化できます。
ユーザー参加型コンテンツの企画
ユーザー参加型コンテンツは、顧客が積極的に関与できるコンテンツを提供することで、顧客とのエンゲージメントを高める手法です。以下に、ユーザー参加型コンテンツの例をいくつか挙げます。
ハッシュタグキャンペーン
SNS上で特定のハッシュタグを使って投稿してもらうキャンペーンを行い、宿泊施設の魅力を拡散させることができます。
例えば、SNS上でホテルの名前に続けて特定のハッシュタグをつけて投稿するキャンペーンを開催できます。その結果、顧客は自分自身の視点からホテルの魅力をシェアすることになります。
他にも、海辺の旅館では 「#XX(地名)で最高のサンセット」 のようなハッシュタグを用いて、夕日を見る最高の場所として顧客が自分たちの経験をシェアするように誘導するできます。その投稿された写真や体験談をウェブサイトやSNSで紹介することで、顧客の視点からの宿泊施設の魅力が広がります。
コンテストやアンケート
宿泊施設のサービスや施設に関するコンテストやアンケートを実施し、顧客と直接的に対話するチャンスを提供します。
例えば、旅館の新たな料理メニューを考えるコンテストを開催したり、最近導入したアメニティに対するアンケートを実施することで、顧客の意見や感想を取り入れることができます。
顧客の意見や提案を取り入れることで、顧客とのコミュニケーションを深めることができます。
ブランドストーリーを伝える
ブランドストーリーは、企業や商品の背景にある物語や哲学を伝えることで、顧客の共感を得る手法です。以下に、ブランドストーリーを効果的に伝える方法をいくつか紹介します。
コンテンツのバラエティを増やす
企業の理念や宿泊施設の魅力を伝えるためには、記事や画像、動画など、様々な形式のコンテンツを活用し、情報を分かりやすく伝えることが求められます。
感情に訴えかけるストーリー作り
顧客の感情に訴えかけるストーリーテリングは、強い印象を与えることができます。以下のようなエモーショナルな要素を盛り込んだストーリーを作成しましょう。
- 宿泊施設の歴史
- スタッフのエピソード
- お客様が経験した感動的な出来事
インフルエンサーとのコラボレーション
インフルエンサーや著名人とのコラボレーションは、ブランド力を向上させる有効な方法です。宿泊施設での滞在体験をSNSでシェアしてもらうことで、広くリーチし、信頼性が高まります。
定期的な情報発信
SNSやブログなどで定期的に情報を発信することで、顧客の関心を持続させることができます。以下のような幅広いトピックで情報を提供しましょう。
- 季節のイベント
- 新サービスの紹介
- スタッフの日常
顧客とのコミュニケーション
SNS上で顧客からの質問やコメントに対して積極的に返信し、コミュニケーションを大切にすることが重要です。また、顧客から寄せられた意見や要望を取り入れることで、より良いサービスを提供できるよう努めましょう。
ホテル・旅館で成功したマーケティング戦略事例
ホテル・旅館がマーケティング戦略を成功させるために取り組むべきポイントを示す事例を紹介します。独自性や地域との連携、顧客とのコミュニケーションなど、さまざまな要素を組み合わせて効果的なマーケティングを展開することが、宿泊業界での成功につながります。
インスタ映えする空間づくりで話題になったホテル
あるリゾート系ホテルでは、インスタグラムで話題になるような美しいインテリアや独自のデザインを導入しました。これにより、多くのインフルエンサーが宿泊施設を訪れ、SNSで写真や動画を投稿しました。
その結果、ホテルの認知度が大幅に向上し、予約が急増しました。
地元の食材を活用した料理で地域連携を強化した旅館
地方観光都市のある旅館では、地元の農家や漁師と連携して、新鮮な地元食材を活用した料理を提供することで評判を高めました。また、地元の観光資源を活用したオリジナルの観光プランを提案し、宿泊客に地域の魅力を伝えることに成功しました。
オンライン限定プランで集客に成功したホテル
都市部に展開するあるホテルは、ウェブサイトや予約サイト限定のプランを設け、割引や特典を提供しました。これにより、オンラインでの予約数が増加し、宿泊客の満足度も高まりました。さらに、ウェブサイトのSEO対策を行い、検索エンジンでの順位を上げることで集客効果がさらに向上しました。
季節限定イベントでリピーターを獲得した旅館
都市部から遠くない観光地にある旅館では、季節ごとに異なるイベントやプランを企画し、リピーター客を獲得することに成功しました。例えば、夏には花火大会やビアガーデン、冬には雪だるま作りや温泉イベントなど、季節感あふれるイベントを開催しました。
メールマーケティングで顧客リストを活用したホテル
あるシティホテルは、メールマーケティングを活用して顧客リストを効果的に利用しました。過去に宿泊したお客様に対して、ニュースレターや特別プランの情報を定期的に送信しました。
また、顧客の誕生日や記念日に特別な割引やプレゼントを提供することで、リピーター客の獲得や顧客満足度の向上に成功しました。
テーマ別の客室で差別化を図ったホテル
海外からの観光客利用が多いあるホテルは、テーマ別の客室を設け、独自の雰囲気を演出しました。例えば、映画や音楽、アート、日本文化など、様々なテーマに沿った内装やサービスを提供することで、宿泊客に新しい体験を提供しました。これにより、口コミやSNSで話題になり、集客効果が高まりました。
エコツーリズムに力を入れた宿泊施設
環境保護への意識が高まる中、あるグランピング系の宿泊施設はエコツーリズムに力を入れました。地元の自然環境や文化を大切にするアクティビティを提供し、地域の持続可能な発展に貢献しました。
この取り組みが評価され、環境に配慮した旅行を求めるお客様からの支持を集めることに成功しました。
まとめ
今回は、ホテル・旅館のマーケティングについて、WEBマーケティング、SNSマーケティング、イベントマーケティングなどの手法を紹介しました。
特に、SEO対策とウェブサイトの最適化、ユーザー参加型コンテンツの企画、ブランドストーリーの伝え方などは、効果的な集客につながるポイントです。自分の宿泊施設のマーケティング戦略を見直してみる際の参考にしてください。
一つ一つの戦略は、日ごろから行っている集客施策の延長にあるかもしれません。しかし、「選択と集中」のバランスを取りながら、より効率の良いマーケティングを行うには戦略の設定と日々の調整が欠かせません。第3者からの俯瞰的な視点が必要になることもあるでしょう。
自社で現在行っているマーケティング施策の戦略性と効果に不安がある場合は、お気軽に弊社コンサルタントにご相談ください。