かっこ株式会社の統一されたイラスト使いの巧みさ

決算説明会資料・株主総会資料・会社説明資料などのIR資料作成担当者の方にすぐ役立つ情報をお届けします。

かっこ株式会社(Cacco Inc.)は、主にビッグデータとアルゴリズムの領域における不正検知サービスサービス、決済コンサルティング、データサイエンスサービスを提供している企業です。
国内のBtoC-EC(消費者向け電子商取引)市場規模拡大や越境ECの規模拡大が予想される中で、未払いや詐欺などの不正も増加し、収益向上の阻害要因となっています。かっこ株式会社は独自のロジックで利用者の「ふるまい」から異常・不正を検知し、新たな手口にも柔軟に対応できる不正検知のソリューションを提供しています。
また、EC事業に携わってきたノウハウに基づき、決済メニューの導入に関するコンサルティングを実施し、消費者満足と利益の最大化を両立する提案を行っています
2023年5月に発表された「2023年12月期 第1四半期 決算説明資料」から、IR資料の最新動向を学びましょう。デザイン性あふれた資料となっています。

表紙デザインが秀逸


まず目を引くのは表紙のデザインの完成度の高さです。上記2枚は2022年と2021年の表紙です。毎回コーポレートカラーに合わせたセンスあふれる表紙を制作してくるそのデザイン能力の高さには驚かされます。毎回ガラッとデザインを変えながらも、コーポレートカラーを巧みに使用して統一性を保っています。
決算資料制作担当者であればわかると思いますが、毎回表紙のデザインを変えるのはたいへんな工数です。しかも、その中で統一感を守るのは並大抵のデザインセンスではありません。
コーポレートカラーやブランドカラーの一貫性は、ブランドのイメージを強化し、視覚的な影響力を保つための重要な要素です。この決算資料を見ると明らかなように、ブルー系の落ち着きのある色とそのグラデーションが基調となっていて、視認性が高く落ち着いた表紙を作り出しています。これにより、資料全体の見栄えが統一され、専門性と一貫性を伴った印象を提供します。これは投資家に対して、企業の信用度と安定性を伝える上で非常に有効でしょう。

外枠で締まるデザイン

また、上記ページのように、すべてのページにコーポレートカラーの外枠をつけているのも資料の統一感で重要な役割を果たしています。また、この外枠の効果によって、とりとめのない感じになりがちな表やグラフがギュッと締まりリッチに見えます。
注意すべき点として、外枠を使用する際には、その幅と色が資料全体の視覚的バランスを崩さないようにすることが重要です。
また、全体のレイアウトにも気をつけましょう。外枠の色とレイアウトの適切な使用により、資料全体が一体感を持ちます。

イラストの効果的な繰り返し配置


かっこ株式会社の決算資料のすばらしいアクセントとなっているのが、資料の各所に配置されたイラストです。あえて繰り返し配置することで、資料の流れを作れていますし、その流れが読み手に伝わるようになっています。しかも、同じイラストを使っていてもサイズを変えることで単調に見えることを防いでいます。
また、同じテーマについて論じるページでは同じイラストを基調にしながら展開・変形したイラストを配置しています。以下がその例です。





上記5ページでは、コーポレートカラーを大胆に使用した円形のイラストを大きく配置し、その周辺のイラストを変形していくことでページのテーマを明確にして展開しています。
このような手法を活用することで、決算資料がどうしても膨大な情報量となりがちな状況でも、一貫したブランドイメージを維持し、視覚的に訴求力のあるプレゼンテーションを作ることが可能になります。
ただし、その際に注意すべきなのは、イラストやカラーの使用が過度にならないようにすることです。イラストは情報を強調し、理解を助けるためのツールであり本質を隠すためのものではありません。つまり、イラストを用いるときは、それが情報の伝達を補完し、強調する形で使用することが重要です。
また、コーポレートカラーを大胆に使うことでブランドイメージを強化できますが、使いすぎると情報が読みとりにくくなる可能性もあります。色彩の選択は、視覚的な印象と情報の伝達との間で適切なバランスが重要です。
これにより、資料全体が一体感を持ち、その結果、読み手に一貫したメッセージを伝えることが可能になります。視覚的な要素を適切に活用し、情報を明確に伝えることで、読み手に対してプロフェッショナルで信頼性のある印象を与えることができます。

テキストはグレーボックスで囲めばかっこよくなる

決算資料制作担当者がすぐにまねできるテクニックが、上記のページで印象的な使い方をされているテキストボックスです。これは、どんなデザイン、どんなカラーベースの決算資料でも汎用的に使えるテクニックです。
テキストをわずかに太字にし、薄いグレーのボックスで囲むだけのシンプルな手法ですが、これによりページ全体が統一感を持ち、視覚的に一貫性が保たれます。さらに、テキストボックスは読者の視線を自然に誘導する役割も果たします。重要な情報を強調し、読者がその情報に注意を向けるようにすることで、資料のメッセージがより明確に伝わります。
覚えておきましょう!テキストを少し太字にして、薄いグレーで囲むだけ。これで、ページ全体がビシッと締まりますし、読み手の視線を自然に誘導しやすくなります。

上手なチャーンレート(解約率)の見せ方

かっこ株式会社が提供している不正検知サービスはSAASスタイルで提供されています。SAAS事業を展開する企業にとって重要なKPIがサービスのチャーンレート、つまり解約率です。
当然ですが、解約率はネガティブな指数ですし、常に0になるのも非現実的です。また、サービスや商品のタイプによって大きく幅があるので、明確な基準を示しにくいKPIです。ですから、資料での見せ方には気を使うKPIと言えるでしょう。
それでも、ステークホルダーの注目度も高いこのKPIを分かりやすく見せるために最近はグロスチャーンレートとネットチャーンレートの2つを並べて見せるのが常道となっています。グロスは、いわゆる解約率を意味します。ネットは、解約数と新規獲得数を比較して、新規獲得が多ければマイナスの数字になります。
かっこ株式会社でも、上記ページのようにネットとグロス2種類のグラフを時系列で示しています。Gross解約率を低く保ち、Net解約率でマイナスの数字を保っていることを明確に示し、ステークホルダーに安心感を与える資料の作りになっています。
アクセント色を用いて重要なポイントやキーワードを強調することで、読み手が重要な情報に目が止まりやすくなります。これにより、資料を読む際の効率性が向上し、情報の伝わりやすさが増します。投資家が多くの企業のIR資料を比較検討する中で、自社の資料が目立ちやすくなる効果があります。

まとめ

かっこ株式会社が2023年5月に発表した決算情報から、IR資料作成で敷衍して活用できる部分は以下です。

【重要】
1. コーポレートカラーを用いた毎回変わる表紙デザイン
2. 外枠の使用
3. イラストを展開しながら繰り返し使用
4. テキストはグレー囲みすれば締まって見える
5. チャーンレートの見せ方

デザインセンスの高さはなかなか真似が難しい点ですが、外枠の使用やテキストのグレー囲みなどはいますぐにでも使えるテクニックではないでしょうか?ぜひ自社の資料作成にお役立てください。