メルカリ株式会社決算資料のカラーデザインの巧みさ

決算説明会資料・株主総会資料・会社説明資料などのIR資料作成担当者の方にすぐ役立つ情報をお届けします。

メルカリ株式会社はフリマアプリ「メルカリ」を開発・運営する企業で、2013年に設立されました。創業者の山田進太郎氏は「新たな価値を生み出すために、個人間でモノを売買できる場を提供したい」という想いからメルカリを立ち上げました。
メルカリでは、ユーザーは写真を撮ってアップロードするだけで簡単に商品を出品できます。また、取引はアプリ内で完結し、配送手続きや決済もスムーズに行えるようになっています。
メルカリは、国内だけでなく海外市場にも進出しており、2017年には米国での事業展開を開始しました。米国版「メルカリ」は、日本版と同様にスマートフォンアプリを通じて個人間での商品売買が可能で、現地のニーズに合わせた機能やサービスが提供されています。
2023年2月に発表した「2023年6月期2Q 決算情報」から、IR資料の最新動向を学びましょう。シンプルな仕方でカッコよく見せる方法でつまった、読み手のことをよく考えた構成となっています。

色味を抑えているからこそここぞのアクセントが効く

企業カラーの統一感は、ブランドイメージを強化し、視覚的な印象を一貫させる効果があります。メルカリのブランドカラーは水色と赤ですが資料の中では水色をベースに展開しています。
上記の資料でもわかるように、ブランドカラーの水色とそのグラデーションをベースに、見やすく落ち着いたテーブルとなっています。そのおかげで資料の見た目がまとまり、プロフェッショナルで一貫性のある印象を与えます。投資家に対しては、企業としての信頼感や安定感を伝えることができます。
同時に、メインの色味を水色でまとめて展開していくことにより、ここぞというときの赤が効いています。
例えば以下のテーブルでは、伝えたい数字テキストに赤を使うことで、伝えたいことを明確にしています。

以下のグラフページでも、水色で繰り返してきたリズムの中で赤いテキストをアクセントとして使っていますので、自然に視線がポイントに誘導されるのではないでしょうか?

以下のサービス一覧は、アクセントカラーの使い方の模範決定版ではないでしょうか?メルカリでは2022年11月からクレジットカード事業を開始しています。今回の決算資料では目玉といえる情報です。このページでは、自然にページの中心にあるこの目玉情報に視線が誘導されるのではないでしょうか?ページの中心部分に視線を誘導するのは、意外に難しいものです。その難関を、アクセントカラーの活用によって自然にクリアしています。

アクセント色を用いて重要なポイントやキーワードを強調することで、読み手が重要な情報に目が止まりやすくなります。これにより、資料を読む際の効率性が向上し、情報の伝わりやすさが増します。投資家が多くの企業のIR資料を比較検討する中で、自社の資料が目立ちやすくなる効果があります。

色の量のバランスでメッセージを巧みに伝える

前述したように、基本的にはブルー系のさわやかなベース色に対して、赤をアクセントに使うのがメルカリの決算資料の通常展開です。ですから、どちらかというとブルー系の配色が多くなります。
しかし、あえて赤系と水色系の配色をほぼ50:50で使っているページもあります。それは、2つの観点から構成されたページです。例えば、以下のようなページです。

上記ページでは、メルカリグループの各事業のシナジー効果を説明します。「Marketplace」と「Fintech」の2つの観点から説明するために、赤系と水色系、そしてそれぞれのグラデーションカラーを巧みに活用しています。上下に均等に50:50の比率で色を分配することで、それぞれの事業分野が台頭にシナジー効果を発揮している(してほしい)状況が表現されています。
難を言えば、上下のボックスに囲まれている部分に配置されている複数のアイコンは少し安易に思えます。シナジー効果の定番ともいえる円形の立体矢印も、このページに限って言えば不要ではないかと感じました。

影さえ使えばカッコよく見える

シンプルながらもセンス良く、かっこよくページを見せる方法をお探しの方も多いのではないでしょうか?メルカリの決算資料はいい参考になります。表紙、及び各見出しページはごくごくシンプルです。特に、各見出しページはセンターに見出しテキストを設置しているだけですが、センスあふれているページデザインではないでしょうか?
このセンスを醸し出しているのは、白ページを大胆に分割しているシャドーの使い方です。以前からメルカリの決算資料はシャドーの使い方が巧みです。
以下は2021年の決算資料です。この時は、最新版のようにシャドーに色は付けていませんし、形も違います。それでも、シャドーを巧みに使うことで、ただの白いページをカッコよく、センス良く見せることに成功しています。

シャドーを使ってテキストの周りに立体感や奥行きを与えることで、背景とのコントラストを強調できます。これにより、見出しテキストがより目立って、読み手の注意を引き付ける効果があります。また、テキストと背景の境界を明確にし、視覚的な際立ちを強化することで、テキストの可読性を向上させます。特に、背景色とテキスト色が似ている場合や、画像やパターンが背景にある場合には効果的です。
お手軽にセンス良く見せるためのテクニックとして、シャドーの使い方をぜひマスターしましょう。

まとめ

メルカリ株式会社が2023年2月に発表した「2023年6月期2Q 決算情報」から、IR資料作成で敷衍して活用できる部分は以下です。

【重要】
1. 色を使い過ぎない
2. アクセントカラーはここぞというときに使う
3. 2つの観点から表現する際に色のバランスを活用
4. 白ページにシャドーを入れるだけでセンスアップ

アクセントカラーの使い方、色のバランスで情報を演出するテクニック、そして比較的シンプルな方法でセンス良く見せるテクニックは、すぐにでも自社の決算資料に取り込めるポイントではないでしょうか?これから各タイミングごとにメルカリから発表される資料が楽しみです。