オープンワーク株式会社最新事業計画書の見やすいクリエイティブ

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オープンワーク株式会社最新事業計画書の見やすいクリエイティブ

オープンワーク株式会社は、国内最大級の社員クチコミ数で、企業の労働環境をよりオープンにして人気急上昇の就職・転職プラットフォームを運営しています。旧サイト名のVokersでご記憶の方も多いのではないでしょうか?今月東京証券取引所グロース市場への上場も果たしました。Web履歴書登録者数は70万人を超えており、企業の口コミ数も1,400万件を超えています。

オープンワーク株式会社が2022年12月に発表した「事業計画及び成長可能性に関する事項について」から、クリエイティブの最新流行動向を学びましょう。アップルがiPhoneに搭載しているiOS7で公開して一躍広まったフラットデザインからの揺り戻しを随所に散らしたセンスあふれるクリエイティブとなっています。

シンプルな表紙

まず目を引くのが、コーポレートカラーを用いた、シンプルで見やすい各見出し扉です。大胆にコーポレートカラーを用いたページが各セクションの間に挟み込まれていることで視認性をアップしています。また、シンプルかつ印象的なイラストが効いています。このイラストは各セクションで少しずつ違うのも細かいですが遊び心が効いている演出です。そして、この時点で従来のフラットデザインをベースにしながらも、立体的な質感を生かしたクリエイティブとなっています。

フラットデザインとは?

フラットデザインとは、インターフェースやWebサイトなどのデザイン手法の1つで、3D視覚効果を排除した、扁平でモダンな見た目を目指すものです。3D視覚効果を排除することにより、デザインをわかりやすくするとともに、操作性を向上することを狙います。2010年代に流行し、代表的なフラットデザインとして、以下が挙げられます。

● Windows 8: Microsoftが2012年にリリースしたOS
● iOS 7: Appleが2013年にリリースしたiOS
● Google Material Design: Googleが2014年にリリースしたデザインガイドライン
● Twitter Bootstrap: Twitterが2011年にリリースしたWebフロントエンドフレームワーク

現在では、今回紹介するオープンワークのように、フラットデザインのアイデアを取り入れた発展形がよく使われています。

見やすいKPI

上記は、左に会社としての売上高等の財務重要指標、そして右側にサイトの重要指標がまとめられています。同系色でまとめられながらも、しっかり色分けされているので見やすいページになっています。

吹き出しの使い方がいかにもパワーポイントという感じで少しこなれていない面はありますが、数字部分のフォントサイズの上げ方などは見やすさを優先したつくりとなっています。惜しいのは、ぱっと見で左右の吹き出しのバランスが少しちぐはぐに見える点でしょうか。原因は、フォントサイズを上げた数字部分のY軸(高さ)位置がずれているからでしょう。吹き出し図形の高さを合わせるよりも、ファーストビューで目につく数字部分を基準にした方がよかったのかもしれません。

ワイドページを大胆に用いたエコサイクルの表現

事業のエコシステムを、ワイドページを活かして大胆に表現したレイアウトです。フラットデザインをベースにしながらも奥行き感を見せた見栄えするページになっています。見出し扉でも用いている人型のアイコンを巧みに配置して循環の方向を自然に表現しているのも見逃せません。この種のアイコンは素材サイトでも簡単に入手できますのでどんどん活用したいところです。このような循環系の表現はIR資料でも頻繁に必要とされます。このページのように円レイアウトを用いて表現するのが定番になっていますが、そうなると頭を悩ますのが各サイクルを説明するテキストの置き所です。このページのように円レイアウトを活かして設置するテクニックは使いどころが多そうです。

メッセージを正確に伝える積み上げ表現

グラフをまったく使わないIR資料はほとんどないでしょう。しかし、作り手の意図を正確に伝えるのは簡単ではありません。

このページは会計年度ごとの契約顧客の利用度合い(入社人数)を示したグラフです。新規顧客を安定して増やしつつ、長期顧客からも変わらず利用されていることを、シンプルかつ正確に表現しているすばらしいグラフです。かつ、ビジネス全体の成長もきっちり表現しているので、ステークホルダーを安心させるページになっています。コーポレートカラーを用いながらも明確に色分けされている積み上げグラフ部分がすばらしいです。この部分を同系色にまとめているからこそ、上昇傾向を示す矢印にアクセントカラーを用いていることが効いています。

奥行きを用いた巧みな表現

このページは、求職者と求人企業のマッチングを行う事業の成長戦略をシンプルに表現したページです。ここでも、従来のフラットデザインを発展した立体的なクリエイティブを活用しています。立体的なクリエイティブを使うことで、左右の長方形(こちらは平面的)との遠近関係が生じます。そのことでクリエイティブの重なりが生じ、ますますページの奥行き感を強調しています。ページの奥行きを表現することにより、読み手に事業の成長性を想起させます。

さらに、字数の割には窮屈感のないページ構成を実現しています。制作時にそこまでの意図をもって作られたレイアウトかは不明ですが、ぜひ活用してみたいテクニックです。

アクセントカラーを巧みに用いたグラフ

上記ページは、各事業の長期戦略を説明したページです。時系列を横軸、収益を縦軸とするグラフ表現は定番として用いられます。ここでも、従来のフラットデザインから一歩発展した立体的なクリエイティブを採用しています。OpenWork事業をベースとしながらも、リクルーティング事業、及びFIS・その他事業で長期成長を狙う意図が、わかりやすいカラーリングで示されています。前述の積み上げグラフと異なり、明確に色を分けることで事業の区別がしっかり伝わります

興味深いのは、グラフの本体部分は平面的なデザインで作り、周辺を立体的なデザインにしていることです。このことにより、あくまでグラフは長期予想であり、新事業の開始時期、リクルーティング事業がオープンワーク事業(従来事業)を追い越すタイミング、ワーキングデータプラットフォームへの具体的な移行時期など詳細について明示しないまでも現実味のあるグラフとして表現することに成功しています。

ちなみに、オープンワークに掲載されている企業の口コミはオルタナティブデータとしても価値が高く、金融機関へ販売されたり、大学・専門機関の研究材料とするなど活用の幅が広がっているようです。デザイン的に惜しいのは、左上のINPUT/OUTPUTの部分が少し見にくいことでしょうか。

まとめ

オープンワーク株式会社が2022年12月に発表した「事業計画及び成長可能性に関する事項について」から、IR資料作成で敷衍して活用できる部分は以下です。

【重要】
1. コーポレートカラーを用いた、シンプルで見やすい各見出し扉
2. 同系色でまとめながら、色分けが見やすいKPIページ
3. エコシステムを、ワイドページを活かして大胆に表現したレイアウト
4. 作り手の意図を正確に伝えた積み上げグラフ
5. 立体クリエイティブでページの奥行きを演出
6. 目的に応じたグラフ内のアクセントカラーの使い方

パワーポイントを用いたと思われるシンプルなページ構成、クリエイティブのなかでも読み手へ伝えたいことがよく整理された資料でした。これからタイミングごとに発表される資料が楽しみです。

参考:オープンワーク株式会社「事業計画及び成長可能性に関する事項について」
https://www.openwork.co.jp/ir/

いかがでしたでしょうか?各企業のIR資料には様々な工夫が満載で、参考になるものばかりです。今回は、弊社の視点で解説いたしましたが、また違った見方もできるかもしれません。投資家へ想いを伝え、投資を引き出すツールとしてIR資料作成には悩みが付き物です。是非一度弊社コンサルタントとお打合せください!凝り固まった頭の中が少しばかりほぐれるかもしれません。